2017年07月15日号
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artscapeレビュー

乳歯(神村恵、津田道子)『知らせ♯2』

2017年03月01日号

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会期:2017/02/10~2017/02/13

STスポット[神奈川県]

昨年3月に神村恵、津田道子の2人で行われた『知らせ』の第二弾(今作からユニット名が「乳歯」とついた)。今回は山形育弘をまじえて3人での上演となった。7つのインストラクションから構成される。最初のインストラクション「言霊」は、まだ山形が登場していない時点で「一人目の山形さんが来る」と100回くらいか、2人で声を合わせ唱え続ける。これが典型的なように、今作のテーマは「見えないもの」との関わりである。山形が現われると、今度は神村が隠れる。山形が床上にあるプロップ(小道具)を即興で取り扱う(筆者が見た回では、山形は新聞紙をゆらゆらとなびかせた)。その後、神村が出てくると、床を這うような姿勢で、どうも床のあたりの空気を感じているようだ。津田がすかさず「何をしているんですか」と聞く。神村は「空気の揺れを確認しています」と答える。つまり、これは神村の不在中に山形がしていたことを当てるゲーム。新聞紙に手をやると、神村は新聞紙の隙間にテニスボールを差し込んだ。なるほど、神村の答えは正解にかなり近かったわけだが、狙いはもろちん、単にゲームに勝つことではない。舞台上で「見えないもの」にパフォーマーが関わること、それ自体を見せることが目論まれている。彼らはこの舞台を「修行」と呼んだが、ゴールのない場の形容としてとても興味深い。床を這う姿勢に「ダンスに見えますね」と、津田はコメントをマイク越しに挟む。津田だけではなく、神村も山形もインストラクションの合間にあるいは最中に対話をし続けている。この言葉たちは、舞台にメタ次元を与える。パフォーマーの行為に単に陶酔することを許さない仕掛けだ。言葉の介入やそうした読み替えは、その場の「関節」を外す。観客は、「見えないもの」をめぐるやりとりを目撃しながら、見えているもののなかに起こる間隙へ想いを馳せた。

2017/02/10(金)(木村覚)

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