artscapeレビュー

佐伯慎亮個展「リバーサイド」

2017年04月01日号

会期:2017/02/18~2017/02/26

FUKUGAN GALLERY[大阪府]

関西を拠点に活動する気鋭の若手写真家が、今年1月に刊行した写真集『リバーサイド』の収録作品を中心とした個展を開催した。展示は2つの部屋で構成されている。入口を入ってすぐの広い部屋には、パネル貼りした大小の写真作品が、ランダムながらも一定の秩序を持って並び、室内中央には天井から吊った立方体(6面のうち4面に作品が貼ってある)がゆっくり回転している。一方、奥の小部屋は、ソファー、センターテーブル、スタンドライト、カーペットが配され、壁面は雑貨や佐伯の子どもたちが描いた絵、工作物などで埋め尽くされていた。また、センターテーブルには佐伯がこれまでに発行した写真集が置いてあった。インスタレーション兼ビューイングルームといったところか。つまりこの2室は、写真家と家庭人、あるいは作品とその苗床としてのプライベートを対比的に示していたのだ。さて肝心の作品だが、いずれも家族や自然を瑞々しく捉えたもので、生命や日々の生活を愛おしむ視点が貫かれていた。また会場で交わした会話のなかで、佐伯の実家が寺であり、彼自身も僧侶の勉強をしたことがあると聞き、彼の作品のベースに仏教的死生観があることも実感した。

2017/02/21(火)(小吹隆文)

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