2018年07月01日号
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artscapeレビュー

額装の日本画

2017年04月01日号

会期:2017/02/25~2017/04/02

栃木県立美術館[栃木県]

美術館が自館のコレクションをどのように紹介するのか。展覧会を見るときには作品と同等、あるいは以上にその切り口に興味を惹かれる。画家や団体、モチーフやジャンル、時代や様式等々、多様なテーマ設定を考え得るとはいえ、作品もしくは作家が中心になることが一般的だろう。そういう点からすると、栃木県立美術館のコレクションによる企画展はやや異色かもしれない。昨年の「学芸員を展示する」(2016/1/6-3/21)の主題はタイトルの通り、蒐集・調査・展示・保存といった、美術館学芸員の仕事をコレクション作品を通じて見せるもの。照明の色味による作品の見え方の違いや、カンバスの裏側を見せるコーナーなど、工夫された構成が印象的だった。
今回の「額装の日本画」もまたタイトルの通り。かつて掛軸や巻物、屏風などの形式で鑑賞されてきた日本画は、近代になって西洋画の影響あるいは展示空間としての洋風建築の普及に合わせて額装されるようになっていった。本展は和紙改良と大判化が日本画の大画面化に果たした役割、団体展と出品規定、表現の変遷などを横軸に、「表装替え」や近年の「脱・額装」まで、栃木県立美術館の日本画コレクションによって額装の変遷を見せる。企画を担当した志田康宏学芸員によれば、美術館の所蔵品記録に額縁のデータが含まれないなど、額装の歴史的変遷を辿る上では困難もあるという。絵画作品の写真撮影は額を外した状態で行われ、図録等にも額縁が付いた状態で掲載されることは稀だ。そのため、作品がいつの時点で現在の額に収められたのかを同定することが難しい。そもそも額を選んだのは画家なのか、画商なのか、蒐集家なのか。本展に団体展等に出品された比較的大型の作品が多いのは、展覧会出品時から額が替えられていないだろうという推測のためでもあるという。展覧会会場の写真、画家や額縁商の記録などを丹念に追っていけば、変化の様相をさらに詳しく知ることができるかもしれない。
近年の「脱・額装」は日本画・洋画に共通する現象ではないだろうか。パネルの側面にまで描かれた作品は、画材のテクスチャーによる脱・平面とはまた違った形で絵画を立体化、物質化する。他方で脱・額装には、作品の取り扱いを難しくする側面がある。額という保護枠がなければ、気軽に作品を吊ったり掛け替えたりすることができないではないか。というわけでギャラリーでよく見かけるようになったのは作品よりひとまわり大きい箱形の額だ。その性格としては額というより作品ごと移動可能な壁面といった趣。近年の動向を見るだけでも、額装のありかたは絵画をめぐる多様な要因とリンクして変化してきたことが分かる。とても面白い着眼点の企画だ。[新川徳彦]


会場風景

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2017/03/02(木)(SYNK)

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