artscapeレビュー

オオニシ クルミ個展 形と記憶

2017年06月01日号

会期:2017/04/16~2017/04/23

GALLERY 301 due[兵庫県]

画廊の壁面に、サンゴを思わせる小さな白いオブジェが数十点も並んでいる。なかには輪になったものも。近づいてじっくり見ると、それらは花や花束をモチーフにしたオブジェだった。細部までじつに細かい造形となっており、彫刻や彫塑では不可能なほどの緻密さだ。つくり方を聞いてみると、やはり生花を泥漿に浸して焼成したやきものだった。生花は窯の中で燃え尽きてしまうので、作品は一種のミイラ、生の姿を留めた死体、あるいは生命の抜け殻と言えるだろう。植物や衣服を泥漿に浸して焼成する陶芸作品はけっして珍しいものではない。しかし彼女の場合、花のかけらから花冠まで多様な作品を並べているのと、個々の作品から放たれる可憐な風情が印象的だった。作者は新人で、その初々しさ、技術と経験の足りなさが良い方向に作用したとも言えるだろう。技術面、造形面でまだまだ伸びしろがあると思うので、今後の展開が楽しみだ。

2017/04/21(金)(小吹隆文)

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