2018年10月15日号
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artscapeレビュー

新宿区成立70周年記念協働企画展 新宿の高層ビル群ができるまで 塔の森クロニクル

2017年06月01日号

会期:2017/03/05~2017/05/07

新宿歴史博物館[東京都]

文字どおり新宿高層ビル群の歴史的変遷を見せた展覧会。同館はこれまでも類似した企画展を催してきたが、今回は「視覚的・立体的に体感できる西新宿ビル群の年代記」をコンセプトに据えたうえで、中西元男らによる映像作品《西新宿定点撮影》(1969- )をはじめ、関連する地図、書籍、写真などの資料を展示した。
ただ今回の展示の中心は、なんといっても新宿駅構内の模型作品である。これは昭和女子大学環境デザイン学科田村研究室によって制作された縮尺1/100の模型。シナベニヤ板を加工した水平パーツと階段パーツを組み合わせた立体造形で、ちょうど腰のあたりまで吊り上げられて展示されているので、地上と地下を縦横無尽に入り乱れる複雑な構造が手に取るようにわかる。普段新宿駅を利用する人であっても、それがこれほど多層的に構成されていることに思いが及ぶことはなかなかない。私たちにとっての日常を相対化する装置として、この作品は大きな意味をもつ。
しかしその一方で痛感したのは、そのような複雑な構造の中を規則的に循環する私たち自身の儚さである。むろんこの模型には人間の形象が組み込まれていたわけではないし、ある種の記号として明記されていたわけでもない。だが、迷路のように複雑な構造体の中を、少なくとも1日340万人もの人間が利用しているという事実を踏まえると、そこには眼に見えない人間のイメージが立ち現われているようでならない。通勤ないしは通学のために利用している乗降客の大半は、決まりきったルートを日々移動しているはずだから、そのおびただしい人の流れはまるで臓器の中を循環する血流に近いのかもしれない。
人間が人間のためにつくり出したにもかかわらず、それが人間を支配するようになるという倒錯。「フランケンシュタイン」に典型的に描かれているような疎外論は、私たちの幸福を考えるうえで依然として有効なトピックである。その観点から現在の都市生活を根底から再考させるという点で、本展は意義深い。

2017/04/08(土)(福住廉)

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