artscapeレビュー

裏声で歌へ

2017年06月15日号

会期:2017/04/08~2017/06/18

小山市立車屋美術館[栃木県]

栃木県小山市に初めて足を踏み入れた。東北新幹線だと宇都宮駅のひとつ手前が小山駅だが、美術館は在来線で小山駅のひとつ手前の間々田駅になる。空っ風の吹きそうな殺風景な街だが、なぜか展覧会のポスターだけはあちこちに貼ってある。あんまり宣伝しがいのなさそうな展覧会なのにね。そもそもどんな展覧会なのかどこにも解説がなく、唯一手がかりになりそうなのが、カタログに一部転載されている丸谷才一の「裏声で歌へ君が代」という一文だ。それについてはあと回しにして、会場を一巡してみて、どうやら「声(音)」と「裏」に関する作品が選ばれていることはわかった。
大和田俊は石灰岩が溶けるかすかな声、國府理は水中のエンジン音を聞くインスタレーションで、加えて地元中学校の合唱コンクールの映像もある。本山ゆかりはアクリル板の裏から描いているし、五月女哲平は裏面はおろか側面も見えない窮屈なスペースに抽象画をはめ込んでいる(しかもタイトルは《聞こえる》)。もうひとつ、明治から昭和初期にかけてブームになった軍艦や戦闘機を描いた「戦争柄着物」が出ているが、これは羽裏や襦袢に描かれることが多かったからだけでなく、君が代は恋歌だったという先の丸谷の「裏話」にも通じるからかもしれない。ちなみに、大和田と五月女は地元出身で、地元中学校の合唱も含めて意外と地元愛が強い。街にポスターが貼られているのもうなずける。

2017/05/28(日)(村田真)

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