artscapeレビュー

千一億光年トンネル

2017年06月15日号

会期:2017/05/20~2017/08/06

ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション[東京都]

若手作家への支援なのか、コレクション展だけでは人が集まらないからなのか、理由はどうあれ、個人美術館が現代美術展を企画するようになったことは歓迎すべきだ。今回は奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵に浜口陽三を加えた4人展。奥村はビルの警備のかたわら、夜の守衛室で黙々と刺繍を制作しているという。さまざまな色を密集させた刺繍は縦横20センチ程度と小さいものの、仕上げるまでに1点1年以上かかり、これまで15点しか制作してない。そのうち7点を公開し、併せて守衛室で刺繍する自撮りポートレートや刺繍道具なども展示。Nerholは、少しずつ異なる木のかたまりを撮った「multiple-roadside tree」のシリーズが中心。これは街路樹の切り株をスライスして1枚1枚撮影し、プリントを重ねたもの。平面+奥行きに時間までも入れ込んだ4次元写真だ。水戸部は油絵具を鉄製パネルに大量に盛った半立体絵画。だが、あまりに重いため4点中3点は寝かせている。モチーフはすべて人体か顔。いずれの作品も時間の蓄積を感じさせ、それが「千一億光年」という大げさなタイトルになったんだと思う。

2017/05/24(水)(村田真)

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