2018年09月15日号
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artscapeレビュー

濱田祐史「Broken Chord」

2017年06月15日号

会期:2017/05/10~2017/07/08

PGI[東京都]

濱田祐史は「写真力」の高い写真家だと思う。これまでも、スモークで光を可視化したり(「Pulsar」2013)、被写体を色面に解体して再構築したりするなど(「C/M/Y」2015)、写真という表現メディアの可能性を高度に活かした作品を発表してきた。ただ、アイディアがあまりにも多彩なのと、その作品化の手際が鮮やかすぎて、どことなく小さくまとまった印象を与えることが多かった。だが、今回の「Broken Chord」のシリーズを見ると、その彼の「写真力」が、ようやく地に足がついたものとして発揮されつつあることがわかる。
今回は珍しくモノクローム作品で、2016年の9月からポーランドのヴロツワフに約1カ月滞在して撮影した写真を中心に構成している。ヴロツワフは過去にドイツ領だった時期もある街で、用済みになったポスターが壁に何重にも貼られていたり、建物の壁が何度となく塗り替えられたりしている眺めに、歴史や記憶の蓄積を感じないわけにはいかなかった。今回のシリーズは、その体験を強調するように、街中の矩形の構造を抽出してプリントしている。また「撮影した後に自身が滞在した記憶の蓄積も作品の鍵になる」と考えて、2台の引伸機を使った多重露光も試みている。結果的によく考えて制作されたシリーズになったのだが、むしろそのまとまりを壊すように展示の最後のパートに置かれた、やや引き気味の都市の遠景の写真群が興味深かった。作品の完結性を一旦保留して、より大きく拡張しようとしているところに、濱田の成長があらわれている。これで終わりにしないで、この「Broken Chord」の方法論をほかの都市(例えば日本)でも試みてみるのはどうだろうか。

2017/05/26(金)(飯沢耕太郎)

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