2018年04月15日号
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artscapeレビュー

森山大道「Pretty Woman & Pantomime」

2017年06月15日号

会期:2017/05/02~2017/06/02

ビジュアルアーツギャラリー[大阪府]

ビジュアルアーツギャラリーは、大阪市北区のビジュアルアーツ専門学校・大阪のなかにある写真作品の専門ギャラリー。1999年から、ほぼ月に一度のペースで企画展を開催しており、今回の「Pretty Woman & Pantomime」展で179回目になる。毎回、意欲的なラインナップを組んでいるのだが、今回の森山大道の展示は特に見応えがあった。
最初のパートに並んでいるのは「ぼくが25歳でフリーの写真家になって一等最初に」撮影した「Pantomime」のシリーズ。近所の産科医院からホルマリン漬けの胎児の標本を借り受けて撮影し、『現代の眼』(1965年2月号)に「無言劇」というタイトルで発表した、まさに彼の処女作というべき作品である。今回の展示には未発表だったカットも含まれており、あらためて森山の原風景というべき謎めいた写真群が、どのように形成されていったのかを辿り直すことができた。
さらに「昨年の春ごろから今年の1月まで、主に東京の路上でスナップした」写真を再構成した「Pretty Woman」のシリーズがそれに続く。こちらはカラー写真が中心で、路上を疾走してイメージを捕獲していく森山の能力が、デジタルカメラを使うことで、衰えるどころか、さらに高まっていることが示されていた。どちらかといえば、モノよりも人間のほうに被写体としての比重がかかっており、2020年の東京オリンピックに向けて、増殖する腫瘍のようにグロテスクに変容しつつある東京の空気感が、見事にすくい取られていた。まさに「処女作と最新作」の2本立て興行であり、現役の写真家による、このようなヴィヴィッドな展示を直接見ることは、写真学科の学生たちにとっても大きな刺激になるのではないだろうか。

2017/05/17(水)(飯沢耕太郎)

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