2017年12月15日号
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artscapeレビュー

佐伯慎亮「リバーサイド」

2017年06月15日号

会期:2017/05/12~2017/05/21

KanZan Gallery[東京都]

赤々舎から8年ぶりの新作写真集『リバーサイド』を刊行した佐伯慎亮が、東京でお披露目の展覧会を開催した。同写真集からピックアップされた30点の展示は、引き締まった内容で、なかなか見応えがあった。
佐伯は本作からデジタルカメラを使い始めたのだという。彼のクリアーで、コントラストが鮮やかな写真のスタイルは、むしろデジタルのほうが向いているのかもしれない。もうひとつ感じたのは、彼の写真に東洋的な美意識がかなり深く浸透していることだった。「リバーサイド」のシリーズは元々「此の岸」というタイトルで構想されていたのだという。つまり「リバーサイド」というのは此岸と彼岸の境界の領域ということであり、そこには仏教的な死生観が投影されている。だが、それだけではなく、画面構成や被写体のフォルムの捕まえ方にも、日本や中国の伝統絵画に通じるところがありそうだ。画面の中の空白の部分、つまり「間」の活かし方、輪郭線を強調するカリグラフィー的な被写体の捉え方は、けっして付け焼き刃ではなく、むしろ天性のものだろう。内容と形式とが無理なく一体化しているために、「リバーサイド」はどっしりと安定感のあるシリーズに仕上がっていた。
本人は写真家としての将来に不安を抱え込んでいるようだが、心配することはないと思う。5~10年に一作というような、ゆったりとしたペースで、作品を発表していけば、彼自身の生の流れに自然に寄り沿うかたちで、厚みのある作品世界が構築されていくのではないだろうか。

2017/05/12(金)(飯沢耕太郎)

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