2017年09月15日号
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artscapeレビュー

オフィスマウンテン『ホールドミーおよしお』

2017年07月01日号

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会期:2017/05/24~2017/06/10

STスポット[東京都]

チェルフィッチュで長らく役者を続けてきた山縣太一が主宰する劇団、オフィスマウンテン。毎年この時期に上演を重ねて今回で3作目。音楽で例えるならばまるで全員がリードの取れるボーカリスト集団と言おうか。7人の役者がほぼ出ずっぱりで、全員がテンションの高い身体性を観客に投げ続けた。これまでの大谷能生の異能を見せる舞台から、さらに発展のあった舞台だった。山縣は一作目から「役者」が主役であるような舞台を理想としていた。奇妙な言い方に聞こえるかもしれないが、既存の演劇において役者はしばしば戯曲(作家)や演出家の奴隷にさせられる。もっと主体的に自由に、役者の躍動する舞台があっても良いのではないか? その思いが3作目で結実した。これまでは、大谷能生が中心にいる分、若手役者はどうしても「サブ」に見えてしまうところがあった。今回も、大谷は中心にいるのだが、彼の役が実際の旅には出ずに『るるぶ』を読むだけの男であり、椅子に座っての演技が多く、対して6人の若い役者は右往左往しながら、身体を躍動させるべくチャレンジを繰り返す。ここで「身体の躍動」とは、その場で起こる無数の出来事にできる限り注意を凝らして巧みに反応し、向こうからの応答を無視せずそれにも反応することで生まれる即興的な身体の密度のことだ。サッカーでは優れたプレイヤーを「視野が広い」と賞賛するが、それに似て、反応の高さが役者の身体に密度を与える。すると、舞台は極めて「スリリング」なものになる。ストーリーの展開などよりも、役者の身体がもたらすスリルに、観客ははらはらする。だから既存の演劇の枠をはみ出し、観客が受け取る印象はパフォーマンス、もっと言えば(様式的外見は随分と異なるが)舞踏に近くなる。あえて深読みするなら、故室伏鴻の遺したものと重なって見えるところが随所にあった。『DEAD』のように、背中をついた逆立ちをするシーンとか、冒頭の、無言で踊る大谷のリズムなど。いずれにしても、相当に異形の、挑戦的な舞台が出現したわけだ。ひとつのフレッシュな舞台表現の磁場が生まれた。

2017/06/09(金)(木村覚)

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