2018年10月15日号
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artscapeレビュー

小林健太「自動車昆虫論/美とはなにか」

2017年07月15日号

会期:2017/06/03~2017/08/12

G/P GALLERY[東京都]

小林健太は、1992年神奈川県生まれの、最も若い世代に属する写真作家である。2016年のG/P GALLERYでの初個展「# photo」では、都市の光景や身近な人物たちを撮影した画像をphotoshopで加工したり、ビデオ作品として出力したりする作品を発表した。現実をデジタル的に変換していく手続きそのものが、「グラフィック・ユーザー・インターフェース」(複雑な操作を直感的に扱うことができるインターフェース)に日常的に接してきた彼自身の生の経験と分かち難く結びついており、結果的にのびやかでナチュラルな画像として出現してくる。最初からデジタル・ツールを自在に使いこなすことができた世代に特有の写真表現のあり方が、いままさに拓かれつつあるといえそうだ。
その小林の新作は、ユニークな発想の作品群だった。都市を走り回る自動車を昆虫に見立てるアイデアは、特に目新しいものではないが、小林は特にアリのような「群知能」を持つ昆虫に注目する。彼らは「個体は単純な反応で動くが、群れになったときには強大な知性を発揮」し、蟻塚のような巨大な建築物をつくり上げる。自動車も同じで、一台一台は知性を持たないが、アリのように都市にはびこってその風景や環境を変質させていく。そんな「自動車昆虫」のあり方をどう表現するのかについてはまだ模索中のようで、会場には大きく引伸ばした道路標識や、昆虫標本を思わせる自動車の写真のほかに、土を焼いてグリッド状に敷き詰めたオブジェなども展示してあった。思考の広がり具合を、どのように作品に落とし込んでいくのかについてはさらに試行錯誤が必要だろう。海外のギャラリーや写真フェスティバルからも参加依頼が来ているようだが、いまは制作と発表のペースを加速していく時期なのではないだろうか。

2017/06/28(水)(飯沢耕太郎)

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