2018年04月15日号
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artscapeレビュー

八木進「CINEMA PARFUM 子供のころ、映写室を愛したように」

2017年07月15日号

会期:2017/06/09~2017/06/15

富士フイルムフォトサロン東京 スペース2[東京都]

2012年に設立された東京カメラ部は、インターネット上で展開されている写真専門の投稿サイトである。毎年、投稿作品の人気投票を行なって「10選」を選び、渋谷ヒカリエで展覧会を開催している。今回、富士フイルムフォトサロン東京で個展を開催した八木進の「CINEMA PARFUM」のシリーズは、2015年に46万点のなかから「10選」に選ばれた作品だという。つまり、SNSの仮想空間から生まれてきた写真表現を、写真展のかたちに落とし込むという、なかなか興味深い試みだった。
作品自体は、閉館が決まった「約40年前に父が建てた映画館」で、息子をモデルに撮影したフォト・ストーリーで、モノクロームの写真を中心にしっかりと組み上げられていた。映写室の独特の雰囲気がうまく活かされていて、銀塩プリントのクオリティも申し分ない。写真展としては上々の出来栄えなのだが、せっかくの東京カメラ部とフジフイルムの共同企画という意味合いはやや薄れてしまった。むしろ、SNSで見る写真のあり方を、展示にももっと積極的に取り込んでもよかったのではないだろうか。写真展の概念を壊すような展示を期待していたのだが、やや肩すかしだった。ただ、インターネットの空間から、八木のような「写真作家」が出現してくるということ自体はとても面白い。SNSの参加者と写真展の観客とのあいだの回路をどのように構築していくかが、今後の大きな課題になりそうだ。

2017/06/14(水)(飯沢耕太郎)

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