2018年04月15日号
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artscapeレビュー

第60回記念 新象展

2017年07月15日号

会期:2017/05/29~2017/06/04

東京都美術館[東京都]

新象展を見るのはたぶん初めてのこと。会場はガランとしていて、見やすいったらありゃしない。作品は抽象が多く、いわゆるアンフォルメル風もあれば幾何学的抽象もあるし、レリーフ状や掛軸形式もあるのだが、日展に見られるような日常を描いた温和な具象画だけがないのが特徴か。その意味で、この会が始まった60年前、つまり「抽象」や「モダンアート」という言葉がまだまぶしく輝いて、希望に満ちていた50-60年代の時代相を色濃く残しているように見受けられる。出品は60回記念の旧作展示を含めて約240点。そのうちの一人だけ焦点を当てると、青木孝子はパースのかかった半抽象的な大作を出品。手前には荒々しい褐色の筆触を残し、奥には火や煙を思わせるオレンジ、白の絵具が伸びる。まるでドラクロワの《ナンシーの戦い》かなにか、遠望した合戦図のよう。その図に被せるように三角の線が引かれ、交点に緯度と経度を表わす記号と数字が並ぶ。これはタイトルから察するに東京とダマスカスの地球上の位置だろう。これも一種の戦争画か。都合のいいことに、特別展示として彼女の9年前の作品も出ているので比べてみると、地球規模のグローバルな視点、俯瞰する視点は変わっていない。

2017/06/01(木)(村田真)

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