2017年12月15日号
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artscapeレビュー

境界を跨ぐと、

2017年08月01日号

会期:2017/06/25~2017/07/06

東京都美術館[東京都]

2年前、隣接する武蔵野美大と朝鮮大の境界に仮設の橋を架け、双方のギャラリーを行き来できるようにする「突然、目の前がひらけて」という交流展が開かれた。いくつかのメディアで紹介されたこともあり、ぼくも見に行きたいと思いつつ、残念ながらかなわなかった。そのときのメンバーを中心にしたグループ展「境界を跨ぐと、」が開かれるというので、これはひょっとして2年前の交流展を振り返るドキュメント展かもしれないと思って見に行く。出品は市川明子、鄭梨愛、土屋美智子、灰原千晶、李晶玉の5人。で、期待は見事に裏切られ、タイトルどおり「境界を跨」いだあとの、つまり現在の各人の作品を紹介しているのだ。彼女たちは過去に留まってはいなかった。トホホ。仮にぼくが2年前の交流展を訪れたとしても、個々の作品を見ることより、むしろ両会場をつなぐ「橋」を渡るという体験に興味があったのだ。同様に今回もそれぞれの作品より、この5人をつなげた「橋」とその後の状況(向かい風も予想される)を知りたかったわけ。われながら失礼な話だが、本当だから仕方がない。
といいつつ、ひとりだけ目に止まった作家がいた。最初は少女趣味のイラストかと勘違いしたが、よく見るとすごく筆達者な李晶玉。会田誠か山口晃を思い出してしまった。数百円のカンパで入手した小冊子にも、「絵画内の絵画という設定は往々にしてダサい。フレーム額縁やら絵画の四角やら、出さんほうがいい。どうせ作者による虚構という事に変わりないのだから、むしろそれは構造が複雑化するほど強調されていくしかないのだから」とか「美術は脆弱だ。ピクシブは自由だからこそ、もはや不自由だ。旗は模様になるか。君が代はただの歌になるか。アリランはただの歌になるか」など、きわめて冷徹な批評性を有する文章を寄せている。彼女が今後どのように世に出るか、出ないか、楽しみにしたい。

2017/07/05(水)(村田真)

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