2018年01月15日号
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artscapeレビュー

プレビュー:KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017

2017年09月15日号

会期:2017/10/14~2017/11/05

ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、京都府立府民ホール “アルティ”、京都府立文化芸術会館、ほか[京都府]

8回目を迎えるKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭(以下「KEX」)。公式プログラムでは、12組のアーティストによる計12の公演や展示を予定。
今回の大きな特徴は2点あり、1点目は「東アジア文化都市2017京都」コア期間事業の舞台部門として、中国と韓国のアーティストが初紹介される。スン・シャオシンは、ネットやサブカルチャーに浸る中国現代社会の若者を描く作品を発表。また、パク・ミンヒは、韓国の無形文化財である伝統的唱和法「ガゴク(歌曲)」を習得した歌い手。宮廷音楽として確立され、親密な閉鎖的空間で歌われた「ガゴク」の鑑賞形態も取り入れ、パフォーマーと観客が1対1で向き合う上演形式も注目される。ネットやサブカルへの耽溺といったグローバルな現象と、伝統文化の再考。こうした文化的アイデンティティをめぐる考察は、村川拓也、神里雄大、ダレル・ジョーンズ、マルセロ・エヴェリンの作品へと繋がっていく。ドキュメンタリーやフィールドワークの手法を演劇に取り入れる村川拓也は、中国と韓国でのリサーチに基づく新作を発表する。ペルー生まれ、川崎育ちという自らのアイデンティティから、移民や他者とのコミュニケーションを主題化してきた神里雄大は、ブエノスアイレスでの滞在経験に加え、近年訪れたオセアニア、小笠原など各地での取材を基にした新作を予定。現地で出演者を見出し、スペイン語での上演を行なうという。また、アメリカの振付家、ダンサーのダレル・ジョーンズは、ゲイ・クラブで広まったヴォーギングからインスパイアされたダンスを通して、ステレオタイプなセクシャリティや抑圧への抵抗を身体表現化している。日本で滞在制作した新作を発表する予定。ブラジルの振付家、パフォーマーのマルセロ・エヴェリンは、過去2回のKEXで衝撃的な作品を観客に突きつけてきた。今回は、舞踏を生んだ土方巽の著作『病める舞姫』を手掛かりとした作品が上演される。極限的な肉体や暴力性を提示してきたエヴェリンが、土方の思想とどう対峙するのかが注目される。


左:スン・シャオシン『Here Is the Message You Asked For... Don't Tell Anyone Else ;-)』 Photo by Chen Jingnian
右:パク・ミンヒ『歌曲(ガゴク)失格:部屋5 ↻』© Festival Bo:m

また、2点目の特徴として、上記のパク・ミンヒに加え、ハイナー・ゲッベルスの音楽劇や池田亮司による「完全アコースティックなコンサート」など、「音楽」との関連性がある。他領域との横断、総合芸術としてのパフォーミングアーツという点では、光と影が巨大な幻想世界をつくり出す田中奈緒子のインスタレーション・パフォーマンスや、美術作家の金氏徹平の映像作品『Tower』をライブ・パフォーマンスとして演劇化する新作がある。また、今年3月に逝去したトリシャ・ブラウンのダンスカンパニーは、「霧の彫刻」で知られる中谷芙二子とのコラボレーション作品のほか、劇場用に制作された作品群を上演する。


左:ハイナー・ゲッベルス×アンサンブル・モデルン『Black on White』 © Christian Schafferer
右:2人『TOWER (theater) 』2017  Photo by Hideto Maezawa

8回目の開催ともなれば、2度、3度と登場する「常連」的な顔ぶれも見受けられる(村川拓也、マルセロ・エヴェリン、池田亮司、金氏徹平、トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー、そしてリサーチプロジェクトとして参加するresearchlight)。そうしたフェスティバルの「基底」に厚みが加わっていくと同時に、新たなアーティストや方向性が加わることで、より太く展開していくフェスティバルの幕開けに期待がふくらむ。
公式サイト: https://kyoto-ex.jp

*ダレル・ジョーンズ『クラッチ』は事情により上演が中止になりました。(2017年9月22日編集部追記)

2017/08/31(木)(高嶋慈)

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