2018年07月15日号
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artscapeレビュー

第10回ヒロシマ賞受賞記念 モナ・ハトゥム展

2017年09月15日号

会期:2017/07/29~2017/10/15

広島市現代美術館[広島県]

第10回ヒロシマ賞を受賞したモナ・ハトゥムの個展。本展のために制作された新作インスタレーション《その日の名残》は、ハトゥムのこれまでの作品にもしばしば登場する、テーブルと椅子、ベッドなど、家庭内の親密な空間を想起させる家具が、炎に焼かれて黒焦げの残骸と化したもの。他にも、政治的な抑圧や人種差別への抵抗を表現した初期の身体パフォーマンスの記録、おろし金など調理用品を巨大化して家具に見立て、見る者を身体感覚的に脅かす彫刻作品、また立方体やグリッド、床面に敷かれた正方形などミニマリズムの視覚言語を用いつつ、傷みの感覚や疎外、監禁、不安定な流動性などを喚起させる作品など、代表的な作品がコンパクトにまとまっている。日本初の本格的な個展ということで、ダイジェスト的で見やすいが、(通常はコレクション展に充てられる小さい方のスペースでの開催ということもあり)展示全体としてはやや物足りなさが感じられた。
一方、通常は企画展のスペースで開催されたコレクション展「光ノ形/光ノ景」は、「光と影」をテーマにしたもの。自然界の光や人工的な灯り、光学現象などを扱った作品のほか、夏という季節柄、「原爆の閃光/焼きついた影/復興と再生の光」といったストーリーに沿って展開する。ただハトゥム展との関連性を持たせるのであれば、ミニマリズム、パフォーマンス、フェミニズム、中近東の作家などを配した方が、ハトゥム作品の文脈がより厚みを持って提示されたのではないか。

2017/08/02(水)(高嶋慈)

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