2018年01月15日号
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artscapeレビュー

荒木経惟「センチメンタルな旅 1971─2017─」

2017年09月15日号

会期:2017/07/25~2017/09/24

東京都写真美術館[東京都]

昨年9月のリニューアル・オープン以来、「総合開館20周年記念」として開催されてきた東京都写真美術館の企画展の掉尾を飾るのは、荒木経惟の「センチメンタルな旅 1971─2017─」だった。彼の「私小説としての写真」の起点となった私家版写真集『センチメンタルな旅』から、新作の「写狂老人A日記 2017.1.1─2017.1.27─2017.3.2」まで、1990年に亡くなった妻、陽子さんとのプライべートな関係を投影した写真を集成した展示である。
「わが愛、陽子」、「東京は、秋」、「食事」、「空景/近景」、「遺作 空2」といったよく知られた作品に加えて、「プロローグ」のパートに展示された、二人が出会ったばかりの時期の日常を綴った「愛のプロローグ ぼくの陽子」(モノクロ/カラーポジ、100点)など、初公開の作品もある。まさに彼の「写真家人生」における最も重要な写真群であり、荒木にとって陽子の存在が、写真家としての方向性を定め、実践していくプロセスにおいていかに大切なものだったのかがヴィヴィッドに伝わってきた。とはいえ、荒木と陽子の関係は一筋縄ではいかない。「陽子のメモワール」のパートに展示された「ノスタルジアの夜」や「愛のバルコニー」といったシリーズを見ると、「撮る─撮られる」、「見る─見られる」という二人の行為が、時には一般的な男女の関係を踏み越えるほどの激しさでエスカレートしていることがわかる。荒木と陽子の物語は、予定調和にはおさまり切れない歪みや軋みを含み込んでいたのではないだろうか。
それにしても、今年は時ならぬ「荒木祭り」になりそうだ。年末の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の「私、写真。」展を含めて、20以上の企画が進行しているという。この凄まじいエネルギーの噴出ぶりはただごとではない。

2017/07/24(月)(飯沢耕太郎)

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