2018年04月15日号
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artscapeレビュー

《山元町立山下第二小学校》《南相馬みんなの遊び場》《あぶくま更正園》

2017年09月15日号

[宮城県]

被災地のプロジェクトを3つ見学する。いずれも素晴らしい作品であり、ようやくデザインのクオリティを備えた復興建築が登場してきた。まず佐藤総合と末光弘和+末光陽子による《山元町立山下第二小学校》は、断面の操作に伴う環境調整のスペックはデータでも理解できるが、ユニット群が中庭ひとつを囲む構成によって学校が成立する、木の小さい空間がもたらす親密なスケール感は現場を訪れないとわからない。隣接施設も彼らが手がけたというが、周囲は完全に津波被災によって移転したニュータウンであり、ここが今後のコミュニティの核となるだろう。
続いて、柳澤潤+伊東豊雄による《南相馬みんなの遊び場》は、原発事故が引き起こした放射線量ゆえに、子どもが屋外で安心して遊べない状況から求められた屋内型砂場という希有なビルディングタイプだった。かわいらしい2つの屋根の下に、ひょうたん型プランの砂場がある。柱と屋根の木造架構が、室内において建築的な存在感をもち、安心感を与えるとともに、周囲に張りめぐらせた開口は安東陽子のカーテンでやわらかさを演出している。
宇野享/CAnの《あぶくま更正園》も、原発に近いために移転や仮設を余儀なくされていた障害者施設の復興建築である。10の個室群×3(男性)、ないし2(女性)がそれぞれ昼間を過ごす共有空間を囲む。特徴的なのは、さまざまな大小の屋根を組み合わせ、広さ以上に気積を確保しつつ、ゆったりとした余裕をもたせ、同時に施設であることを感じさせない、家の集合体のような空間を実現したことだろう。

写真=上から、《山元町立山下第二小学校》《南相馬みんなの遊び場》《あぶくま更正園》

2017/08/14(月)(五十嵐太郎)

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