artscapeレビュー

《旧熊本逓信病院》《熊本北警察署》《熊本大学》

2017年09月15日号

[熊本県]

解体工事を予定しており、もうすでに周囲が塀で囲われた山田守による《旧熊本逓信病院》を訪れた。塀越しで全体像が少し欠けていても、山田らしい衛生陶器モダニズムの優れたデザインは十分に伝わるのだが、驚かされたのは建物の背後にまわってみても、立体的な造形の組み合わせが面白いこと。これほど後姿もチャーミングな建築もめずらしいのではないか。現在も続く熊本アートポリス(KAP)の事業には頭が下がるが、この名建築の解体はもったいないように思う。続いて、KAPの第一号となった篠原一男の《熊本北警察署》(外観はいかついが、内部をよく見ると、エントランス・ホールの装飾や家具はなにげにかわいい)に立ち寄ってから、熊本大学のキャンパスへ。明治20年代の五高資料館、旧化学教室、正門など、いくつかの近代建築がきちんと残っている。ここまで古い建築が現存する日本の大学はもうほとんどないだろう。

写真:左上2枚=《旧熊本逓信病院》 右下2枚=《熊本北警察署》 左下=《五高資料館》

2017/07/16(日)(五十嵐太郎)

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