2018年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

映画監督・佐藤真の新潟──反転するドキュメンタリー

2017年10月15日号

会期:2017/09/15~2017/10/15

砂丘館ギャラリー[新潟県]

『阿賀に生きる』(1992)、『まひるのほし』(1998)、『SELF AND OTHERS』(2000)といった、日本のドキュメンタリー映画の歴史に残る傑作を残し、2007年に亡くなった映画監督・佐藤真。没後もその仕事の見直しが粘り強く進められ、2016年には多くの関係者が原稿を寄せた評論集『日常と不在を見つめて──ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学』(里山社)が刊行された。今回の企画は、佐藤とは縁が深い新潟の地で、彼の業績を振り返るもので、筆者も9月24日に「佐藤真と写真」と題するギャラリートークに参加させていただいた。
旧日本銀行新潟支店長役宅を改装した砂丘館には、『阿賀に生きる』のスチール写真(撮影=村井勇)をはじめとして、佐藤の著書、関連資料などが展示されていた。そのなかには、牛腸茂雄の写真集『SELF AND OTHERS』(白亜館、1977)におさめられたポートレート写真(プリント=三浦和人)もある。佐藤は砂丘館館長の美術批評家、大倉宏の示唆で新潟県加茂市出身の牛腸の存在を知り、彼の写真に強く惹きつけられて映画『SELF AND OTHERS』を制作するに至った。また、長岡市で歯科医院を営みながら、明治30年代~大正時代に膨大な数のガラス乾板の写真を遺した石塚三郎にも関心を抱き、彼の記録写真をベースにした映画も構想していた。その石塚の写真も今回の展示作品のなかに含まれていた。
こうしてみると、佐藤はドキュメンタリー映画作家として活動しながら、無意識のレベルでの視覚的な認識を基本とする、写真表現の可能性にも大きな刺激を受けていたことがわかる。1990年代後半には、当時構想していた『東京』と題するオムニバス映画の準備も兼ねて、自ら東京の街を徘徊してスナップ写真を撮影している(『日常と不在を見つめて』に収録)。佐藤真の映画と写真との関係については、まだいろいろなことが見えてくる可能性がありそうだ。牛腸茂雄についての強いこだわりは、映画『SELF AND OTHERS』に結実したのだが、石塚三郎の写真は、結局映画には使われることなく終わった。そのあたりも含めて、また別の機会に「佐藤真と写真」を総合的に検証する機会をつくっていただきたいものだ。

2017/09/24(日)(飯沢耕太郎)

2017年10月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ