2018年01月15日号
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artscapeレビュー

安藤忠雄展ー挑戦ー

2017年10月15日号

会期:2017/09/27~2017/12/18

国立新美術館[東京都]

建築家・安藤忠雄の約半世紀におよぶ仕事を振り返る回顧展。導入部では通路状の細長い空間に《住吉の長屋》をはじめとする初期の住宅作品を並べ、突き当たりを左折して大きな展示空間に出ると、世界中に展開する代表作の図面やスケッチ、マケット、写真などを群島のように点在させている。細長いギャラリーを見てから大空間に出るという会場構成は、昨年の三宅一生展と基本的に同じだ。そういえば美術館は違うが、東京国立近代美術館の「日本の家」展も似たような構成だった。最近の流行なのか。余談だが、新美術館の近くの三宅一生がディレクターを務める21_21デザインサイトも安藤忠雄の設計。じつは21_21の裏に磯崎新アトリエがあり、磯崎はこの時期もう少し奥のミッドタウンの庭園で、アニッシュ・カプーアとコラボした巨大な風船のコンサートホール《アーク・ノヴァ》を膨らませていた。
さて、今日はプレス内覧会。大空間の中央にドームがあって、そのなかで直島のアートプロジェクトを紹介しているらしいが、安藤本人がこのドームの入口で解説することになっているため、内部に入れず。しばらく待ったが、「もうすぐ来ます」と最初にアナウンスがあってから本人が登場するまで30分くらいかかったか。スターだね。ともあれ、この直島のプロジェクトや、ヴェネツィアのパラッツォ・グラッシとプンタ・デラ・ドガーナの改装計画、中之島を中心とする都市再生プロジェクトなど見どころは多いが、全部省略して、野外展示場に実物大で再現した「光の教会」に触れておきたい。
建築展でいつも気になるのは、どれも設計図や模型、完成写真ばかりで実物が見られない、体験できないこと。そこに絵画や彫刻の展覧会との決定的な違いがあり、建築展がはらむ本来的な矛盾がある。逆に図面などから実物を想像するという建築展ならではの楽しみもあるのだが、先ほどの東近の「日本の家」展における《斎藤助教授の家》のように、最近は建物を原寸で再現する例が増えているのも事実。もちろん実物大で再現といってもせいぜい1軒だけだし、部分的に省略されているし、なにより建ってる場所や周囲の環境が決定的に異なるが、それでも建築内部を体験するには役立つ。問題は家1軒を建てるのだから金とテマヒマがかかること。コンクリートづくりの「光の教会」はじつに7000万円かかったという。本人いわく「厄介なことに、展示ではなく増築に当たるということで作業も建設費も余分にかかった」(朝日新聞、10月9日)。作品の展示ではなく、美術館の増築と位置づけられたらしい。しかもそれが「全部自前」というから驚く。国立美術館で個展を開くには作家が金を出さなければならないようだ。

2017/09/26(火)(村田真)

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