2017年11月15日号
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artscapeレビュー

中島那奈子「イヴォンヌ・レイナー『Trio A』『Chair/Pillow』ショーイング」

2017年11月01日号

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会期:2017/10/12~2017/10/14

京都芸術劇場大春秋座(京都造形大学内)[京都府]

ダンス研究者の中島那奈子が代表者を務める研究プロジェクトのイベント「イヴォンヌ・レイナーを巡るパフォーマティヴ・エクシビジョン」(10/11-15)のなかのショーイングのプログラムを見た。レイナーを軸としてポストモダンダンスを回顧するとともに、そこに「老い」というテーマを盛り込んだ意欲的な研究企画であり、とくにこれまでの類似のイベントと異なるのは、レイナーと活動を共にしているEmmanuéle Phuon氏を招聘して、レイナー直伝の振り付けが日本在住のダンサーたちに施されたことだ。『Trio A』は、6人のダンサーが舞台に登場した。5分強の振り付けは、最初はデュオで、次には一人は踊りもう一人はその踊り手の目を見つめる形で、その次は最初に二人が踊ると、残りのメンバーがそこに加わるという構成で、踊られた。5日間という短期間の猛特訓の末、実施されたパフォーマンスは、『Trio A』がきわめて緻密に構成された振り付け作品であることを強烈に印象づけた。ポスト・モダンダンスというと「ノン・ダンス」や「日常性の導入」といった先入観があるけれども、目前で展開された『Trio A』はいかにダンサーの肉体と精神を酷使する「ダンス」であるかを知らしめた。ダンサーの一人、神村恵に聞いたことをベースに筆者なりに説明すると、ひとつのフレーズごとに様式の違う動きを連ねながら(例えば、「モダンダンス」→「バレエ」→「日常の動作(足踏み)」を3秒ごとに切り替えながら)、同時にそれぞれの様式のもつ審美性をしっかりキャンセルしていく。それによって「モノトーン」の「流れ」を生み出す。そうすると「非ダンスのダンス」が立ち上がる、というわけだ。短期間の特訓では、100%それが実現できてはいなかったかもしれないけれども、どんなダンスを実現せんとしているのかは、見ていて掴むことができた。上演された『Chair/Pillow』は、タイトル通り、椅子と枕を使って8人ほどのダンサーがユニゾンで踊る作品。アップテンポの曲をバックに踊るので、ミュージカルのダンスとしてみれば見えなくもない。これも基本的には、いかにグルーヴ(つい踊ってしまう身体)をキャンセルするかが、振り付け指導の要点だったようだけれど、これが随分と難しかったようで、どこまでレイナー固有のダンスが実現されていたのかは、不確かなところがある。駅前留学的な「短期速習」で生まれた「ポスト・モダンダンス」は、それでも、十分に興味深いものだった。50年前のアメリカ合衆国の前衛作家たちの試みから、私たちが何を継承し、何を置いてゆくか、それは50年前のアメリカの状況といまの日本の状況とがどう異なるかを参加したダンサーたちが自分の身体を通して問い、また彼らがその相違や違和感から何を発見するかにかかっていることだろう。「非ダンスのダンス」というひねくれが今日、どんな活用可能性を秘めたものであるのか。このプロジェクトのインパクトが、じわじわと今後の日本のダンス・クリエイションに影響を与えていくことを期待する。

2017/10/14(土)(木村覚)

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