artscapeレビュー

大駱駝艦・天賦典式 創立45周年『超人』

2017年11月01日号

会期:2017/10/05~2017/10/08

世田谷パブリックシアター[東京都]

本作は一週間前に上演された『擬人』の続編である。『擬人』は殺気立った音響の中で、ときに「コ・ロ・ス(殺す)!」と叫ぶアンドロイドのごとき「擬人」たちのテンションが印象的だった。『超人』も『擬人』を引き継ぎアンドロイドのごとき一段の群舞から始まる。ショーケースに閉じ込められた人形。そのなかに麿赤兒がいる。もうここには人間らしき存在はいない。アンドロイドだけの世界。そこで、アンドロイドは相撲を取る。その様は意外にも滑稽で、前編のシリアスさに比べるとほのぼのとしている。アンドロイドもまた人生を無為に遊ぶものなのか。ラストシーンは麿がアンドロイドたちが引く乗り物の上に立ち、ポーズを決めて舞台を周回する。「超人」をめぐる白熱のストーリーを期待していたのだが、麿の存在感自体がここでのスペクタクルとなった。物語はあるようで存在せず、その分、キャッチーな活人画が提示される。ダンスというのは不思議な表現で、話が転がってゆき、登場人物がそれによって心の変化を経験するといったこととは無縁でよいのだ。そうした話の次元とは別の次元で、肉体は脈動し、死とともにある生を生きており、ダンスはその肉体のドラマこそ舞台に提示するものなのだ。最終的に「麿赤兒ショー」と化すことに違和感がないのは、その肉体のもつ圧倒的な存在感を見せつけられるからであり、私たち観客はまさにこれを見に来たのだと納得させられてしまうからだ。『超人』には、ここ最近の大駱駝艦らしい「父殺し」のモチーフは影を潜め、それとは正反対の超人=麿の力が輝く舞台になっていた。
公式サイト:http://www.dairakudakan.com/rakudakan/2017/anniversary_45th.html

2017/10/05(木)(木村覚)

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