artscapeレビュー

I LOVE LIBERTY LONDON展

2017年11月01日号

会期:2017/10/11~2017/10/16

阪急うめだギャラリー[大阪府]

リバティ百貨店は、1875年にアーサー・レイゼンビー・リバティ(1843-1917年)がロンドンで創業した老舗。本展は、英国フェアが50回を迎えたことを記念して、長きに渡るリバティの歴史、デザイン、ファッションを紹介する催しである。リバティは、万国博覧会などを通じて、日本を含む東洋の美術や工芸品を買い上げていた「ファーマー&ロジャース商会」で働き、同商会の「オリエンタル・ウェアハウス」支配人にまでになった。彼が独立して、立ち上げたのがリバティ商会。唯美主義者たちの「美的」生活に必要な東洋の室内装飾品やテキスタイル等を供給し、人気を博した。以降、リバティは東洋にインスパイアされたデザイン・モティーフで、コットンのブロック・プリントの制作に乗り出した。ギャラリー会場には、彼が訪れたアルハンブラ宮殿の写真、日記、1884年に開始された婦人服部門によるスケッチ画や刺繍サンプル、インド風デザイン(ペイズリー模様)の捺染用のブロック(木片)、生地見本やカタログ等、貴重なアーカイヴ資料が展示された。リバティ・プリントのなかでも革命的ともいえる「タナローン」(高品質なコットンの産地であったスーダンのタナ湖に由来)の誕生は、1920年代に遡る。コットンなのに、絹のような柔らかさとドレープ性が特徴。タナローンの子供服やドレスも出品されていた。とりわけ同社の歴史で「コスチューム・スタジオ」の創設が20世紀初めのファッションに果たした役割は大きい。それを示すがごとく、1900年のアール・ヌーヴォーのスタイル(写真左)から現在に至るまで、各時代を象徴するドレスの展示は壮観だった。ギャラリー・トークでは、デザイン・ディレクター/ジェームス・ミラー氏が、リバティと日本との関わり、世界を旅した彼に因んで新しく発表したシリーズ「merchant traveller」について語り、創業者から連綿と続く東洋との関係性にオマージュを捧げていた。[竹内有子]

左:アール・ヌーヴォーの刺繍が施されたシルクサテンマント 1900 筆者撮影
右:ウィリアム・モリスの「苺泥棒」を用いたキモノ風ドレス(前列右から二つ目)2017 筆者撮影

2017/10/14(土)(SYNK)

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