2017年11月15日号
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artscapeレビュー

北辻良央「全版画Ⅰ〈1976~1988〉」

2017年11月01日号

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会期:2017/10/07~2017/10/28

+Y GALLERY[大阪府]

1970年代から関西を拠点に発表を続けている北辻良央。彼の全版画作品を、今年10月から来年4月に3期に分けて紹介する展覧会が始まった。第1期の今回は1976年から1988年の作品が紹介されている。筆者にとって北辻作品と言えば、1970年代のコンセプチュアルな作品──地図をトレーシングペーパーに忠実に写し取るなど、記憶や反復をテーマにしたもの──や、1980年代以降の物語性が濃厚なオブジェや作品が連想される。しかし1970年代後半の版画作品は一度も見たことがなく、それらへの興味が画廊へと足を向かわせた。では1970年代後半の版画作品とはいかなるものか。それは、ゴッホやゴーギャンなど著名画家の肖像画や、セザンヌの《カルタ遊びをする人々》の模写である。しかし単なる模写ではない。例えばゴッホの肖像画では、画家の自画像を見ながら部分部分を銅板にエッチングし、原画とは逆向きになったイメージを見ながら、今度は部分を統合した肖像画を銅板にエッチングする(原画と同じ向きになる)。そして2点のプリントを並べて展示するのだ。この複雑なプロセスは1970年代前半のコンセプチュアルな作品を想起させ、具象画の引用は1980年代の物語性豊かな作品へとつながる。つまり北辻作品の時代ごとの変遷と接点が明らかになるのだ。今年12月から来年1月にかけて行なわれる第2期では1992~95年の作品が、来年4月の第3期では1999~2018年の作品が取り上げられる予定。そこでもまた新たな発見があるに違いない。ロングスパンの展覧会となるが、今後も欠かさずに出かけて全版画作品を見届けたい。

2017/10/10(火)(小吹隆文)

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