2017年11月15日号
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artscapeレビュー

アメリカへ渡った二人 国吉康雄と石垣栄太郎

2017年11月01日号

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会期:2017/10/07~2017/12/24

和歌山県立近代美術館[和歌山県]

カテゴリー:美術
20世紀初頭に移民としてアメリカに渡り、同地で画家として活躍した国吉康雄と石垣栄太郎。2人の作風は対照的で、国吉がアンニュイな雰囲気のなかにメッセージを偲ばせるのに対し、石垣は社会問題や政治的な主張を直接画面にぶつけた。両者はキャリアも対照的で、国吉がアメリカを代表する画家としてホイットニー美術館で回顧展を行ない、ヴェネツィア・ビエンナーレのアメリカ代表に選ばれたのに対し、石垣は戦後のマッカーシズム(赤狩り)で米国を追われ、日本で余生を過ごした。ただし国吉も、1950年代の抽象表現主義の流行と共に忘れられた存在となり、米国では近年やっと再評価の気運が高まっている。また国吉は米国で亡くなったが、最後まで市民権を得ることができなかった。本展では作品110数点と資料約50点で2人の画業を展観。黄禍論による日本人移民の排斥、戦争、大恐慌、戦後の赤狩りなど、激動の時代を生きたアーティストの姿を丹念に紹介している。折しもいま、欧米では移民やテロが大きな問題となっており、日本にも戦争の影が忍び寄っている。国吉と石垣の生き様は、われわれにとっても他人事ではないのだ。また、米国での国吉の再評価は、純粋に美的価値だけでなく、美術界からトランプ政権へのカウンター的意味合いがあると聞いた。彼は故人になっても政治に翻弄されているのだなと、暗澹たる気持ちになった。

2017/10/06(金)(小吹隆文)

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