2018年04月15日号
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artscapeレビュー

田原桂一「光合成」with 田中泯

2017年11月15日号

会期:2017/09/09~2017/12/24

原美術館[東京都]

今年6月の田原桂一の訃報には驚かされた。1951年生まれだから、まだ充分に活躍が期待できる年齢だったし、つねに野心的に新たな領域を開拓していこうとする気概はまったく衰えを見せていなかったからだ。だが、近年は光と石、金属、ガラスなどを組み合わせた大規模なインスタレーション作品から、彼の本領というべきモノクロームの写真作品へと「原点回帰」する方向に舵を切りはじめていた。本展も、その「原点回帰」の産物といえる。田原桂一が舞踏家、田中泯をモデルとするフォト・セッションを開始したのは1978年。田原が28歳、田中が33歳の時だったという。以後、パリ、ローマ、ニューヨーク、アイスランド、ボルドー、東京など、場所を移動しながら3年間にわたって撮影が続けられる。今回の原美術館での個展には、それらの旧作に加えて、田中が移り住んで農業を営んでいる山梨県北杜市の農園で2016年に撮影された新作、5点が展示されていた。その「光合成」のシリーズを見て感じるのは、舞踏という行為が目指す「身体の物質化」と、銀塩写真の「イメージの物質化」の作用が結びつき、融合していく目覚ましい成果である。1978~80年の若々しい二人のコラボレーションは、むろん素晴らしい出来栄えだが、71歳の舞踏家の皮膚の弛みや白髪を容赦なく捉えきった2016年のセッションは、別な意味で感動的だった。かつての引力に抗うような動きではなく、大地や植物に静かに同化していく肉体のありようが見事に写り込んでいる。田原の「原点回帰」が、彼の死去によって中断してしまったのが、返す返す残念だ。二人のセッションも、もっと先まで見たかった。

2017/10/24(火)(飯沢耕太郎)

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