2018年07月15日号
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artscapeレビュー

単色のリズム 韓国の抽象

2017年11月15日号

会期:2017/10/14~2017/12/24

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

タイトルを聞いてなつかしさを覚えた。70年代の終わりごろ、最初に知った韓国の現代美術がモノクロームの抽象画だったからだ。当時は世界的にミニマリズムの全盛期だったが、韓国のそれは徹底していて、抽象というのもはばかられるような、なにか怨念を塗り込めたような、あるいは視線を遮断するような暗さを感じたものだ。もっともそうした見方自体が当時の韓国に対する無知と偏見からくるものだったかもしれない。そんな韓国美術も90年前後からチェ・ジョンファ、イ・ブルらによる色彩豊かなインスタレーションが登場して一気に華やぎ、モノクローム絵画はすっかり忘れられてしまう。だからぼくにとって今回の展覧会は久しぶりの再会なのだ。
展示は19人の作品を数点ずつ、ほぼ世代順に個展形式で並べている。繭のような楕円にうがたれた墨で画面を埋め尽くしていく郭仁植、モーリス・ルイスと榎倉康二を足して2で割ったようなにじみを見せる尹亨根、画面全体を一色の絵具で覆って鉛筆で引っ掻いた朴栖甫、そして、群青色の岩絵具で線や点を描いていく李禹煥。ぼくがかつて見たのは彼らの作品だった。彼らは全員戦前生まれで(出品作家のうち朝鮮戦争後の生まれはわずか3人しかいない)、日本による植民地支配、第二次大戦、朝鮮戦争、戦後の独裁政治と貧困生活を知っている人たちだ。そうした経験がモノクローム絵画にも影を落としているはずだが、でもそれがひとつの流れになるのは思ったより新しく、70年代に入ってからだという。この暗さはなんとなく昔から連綿と続く韓国の伝統だと思っていたが、それこそ偏見だった。たしかにチマチョゴリにしても和服よりよっぽどハデだ。作品の多くはキャンバスに油彩だが、紙に墨というのもけっこうある。向こうでは日本のように洋画と日本画の主導権争いみたいな無意味な対立がなく、油彩画と韓国画が当たり前に同居しているのだろう。

2017/10/14(土)(村田真)

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