2018年10月15日号
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KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017 スン・シャオシン『Here Is the Message You Asked For... Don't Tell Anyone Else ;-)』

2017年11月15日号

会期:2017/10/20~2017/10/21

京都芸術劇場 春秋座[京都府]

中国の新進劇作家、演出家、批評家のスン・シャオシンによる舞台作品。
ピンク色の透ける布でできた天蓋が舞台空間を覆っている。外界から優しく保護されたような空間の中には、2段ベッドが横一列に3台並び、左と右の2段ベッドも薄い布で覆われている。繭のような個室空間は、少女たちがモニター越しに日本のアニメ、ゲーム、アイドルのライブ映像に没頭する自閉空間だ。彼女たちはベッドに寝転びながらPC画面を眺め、スナック菓子を食べ、メイクし、コスプレ衣装に着替え、自撮り棒に付けたスマホでお互いを撮り合い、ネットに生配信する。彼女たちはもっぱら、LINEを介してコミュニケーションを行なっており、そのやり取りは、同じLINEのグループに参加すれば観客もリアルタイムで共有できる(だがそこで得られるのは擬似的な共有感覚ではなく、全てが液晶画面越しに行なわれるという間接性や疎外感だ)。それぞれの「個室」を仕切る薄い膜は同時に「スクリーン」となり、彼女たちが視聴する中国語字幕のアニメや中国版のニコニコ動画で配信されるアイドルの映像などが次々と映し出されていく。この「繭のように包む膜=スクリーン」は、彼女たちが没頭する二次元の表象世界であると同時に、外界から遮断し守ってくれる保護膜でもある。孵化箱に閉じ込められたような少女たちの姿態を、観客は延々と「鑑賞」させられる羽目になる。ウィンドウ越しに消費される美少女キャラやアイドルたち。舞台上で観客の窃視的な視線に消費される少女たち……。アンビエントな音楽と光に包まれ、コスプレ少女たちは夢遊病者のように徘徊する。
後半は一転して、観客との「触れ合い」タイムが始まる。彼女たちは個室空間から出て客席の中へ歩み入り、観客にカタコトの日本語で話しかけ、握手したり、一緒にスマホで記念撮影を始める。それぞれの個室の膜=スクリーンには、名前や出身地、性格や好きなものについての「自己紹介」が映し出される。客席にはぬいぐるみが投げ込まれ、シャボン玉が飛ばされ、多幸感が振りまかれる。だが握手や記念撮影といった「生身の触れ合い」は、舞台というフィクショナルな機制のなかで「演出」されたものでしかなく、「真のコミュニケーションの回復」などはない。カタルシスの浄化も知的な批評性も手放したまま、確信犯的に微温的な空気感に浸り続けた上演の時間は、明確な「終わり」の気配を曖昧にしたまま、ゆるゆると霧散していった。これは「日本」の歪んだ鏡像であり、他者を通して自らのグロテスクなコピーを見せつけられるという居心地の悪さが残る。それは、表層的な「日本(のサブカル)大好き」(第二次大戦期の日本の戦艦を美少女キャラに擬人化した「艦これ」さえもコスプレされ、萌え対象となる)という無邪気な多幸感のなかに隠された本作の毒である。


スン・シャオシン『Here Is the Message You Asked For... Don't Tell Anyone Else ;-)』(2017) 京都芸術劇場 春秋座
撮影:松見拓也

公式サイト:https://kyoto-ex.jp

2017/10/20(金)(高嶋慈)

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