2017年12月15日号
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artscapeレビュー

森村泰昌「下町物語プロジェクト」2017-2019

2017年12月01日号

会期:2017/11/03~2017/11/25

旧駒ヶ林保育所[兵庫県]

神戸の新長田界隈は、市内を代表する下町エリアであり、1995年の阪神・淡路大震災で激甚な被災を被った地域として知られている。この新長田を舞台に開催されたアートイベント「下町芸術祭」の一環として行なわれたのが、美術家、森村泰昌の「下町物語プロジェクト」である。展示は3つの要素で構成されている。一つは新長田界隈の下町を取材し、6名の住人の表現物や収集物(なぞなぞの看板、動物の張り子彫刻など)の展示であり、もう一つは元保育園の備品で森村が作った即興彫刻《積木組》と、街の音、ピアノ演奏、演説などによるサウンドインスタレーション《下町組曲》、そして最後は元保育園の滑り台式非常階段で、森村はこれを「イサム・ノグチの《ブラック・スライド・マントラ》に匹敵する」と評価した。これらのなかで筆者がもっとも気に入ったのは、《下町組曲》のひとつで、森村が架空の政党党首になって下町の魅力を語る「贋作“下町新党”党首演説」である。元保育園の屋上にスピーカーと椅子を設置し、下町のパノラマを眺めながら森村のメッセージを聞くと、不思議と熱い気持ちが込み上げてきた。このプロジェクトは来るべき東京オリンピックの前年である2019年まで続く予定。次の開催地や日時は不明だが、コンプリートを目指したい。

中村雄二郎氏(理容中村店主・中村美術館)による、動物張り子彫刻の展示風景

2017/11/04(土)(小吹隆文)

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