artscapeレビュー

福岡道雄 つくらない彫刻家

2017年12月01日号

会期:2017/10/28~2017/12/24

国立国際美術館[大阪府]

    大阪を拠点に1950年代から活動してきた彫刻家、福岡道雄(1936~)。彼の仕事を展観する大規模個展が、地元の国立国際美術館で開催中だ。筆者は1990年代から福岡の作品を見るようになったので、彼のことは断片的にしか知らない。いや福岡と同世代の美術関係者にとっても、彼の仕事を体系的・網羅的に見るのはこれが初めてだろう。展覧会は、初期から2005年の「つくらない彫刻家」宣言前後までの約60年間を、全6章で時系列でたどっている。とりわけ《ピンクバルーン》など1960年代の仕事が並ぶ第2章(画像)と、真っ白な空間に1970年代から90年代の風景彫刻8点が配された第4章、《何もすることがない》などの文字を無数に刻み込んだ1990年代以降の作品が並ぶ第5章は、巧みな作品配置も奏功してたいへん見応えがあった。福岡は「反芸術」が流行した1950年代に活動を始めた作家であり、彼の創作態度には一貫して同時代の美術や美術界に対する「反」の姿勢が貫かれている。その一方で作風は時代によって大きく変化し、見ようによっては迷走と取れなくもない。迷走に次ぐ迷走の末に「つくらない彫刻家」に至るわけだが、そこには外見的な一貫性を取り繕うよりも、作家としての生き方に一貫性を求める、自己に厳しい態度が透けて見える。貴重な作品が見られたことはもちろんだが、制作活動と人生がシンクロし、ビシッと一本筋が通った作家人生を知ることができ、大いに感動した。

2017/10/27(金)(小吹隆文)

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