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マリメッコ・スピリッツ──パーヴォ・ハロネン/マイヤ・ロウエカリ/アイノ=マイヤ・メッツォラ

2017年12月15日号

会期:2017/11/15~2018/01/13

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)[東京都]

フィンランドのファブリックブランド、マリメッコの人気が日本で高まったのは2000年代に入った頃だろうか。ちょうど北欧デザインのブームと相まって、あの明るい赤とピンクの花柄ファブリック「ウニッコ」を街中でもよく目にした。ただしマリメッコの社史を調べると、1972年に日本と米国で海外ライセンス契約を結んだとあるから、実はそれより30年近く前から日本に入っていたことになる。当時は一時のブームで終わるのかと思っていたが、そうではなかった。今なお人気は健在で、むしろ定番化したように見える。それほど多くの人々を魅了し続けるマリメッコの魅力とは何なのか。

現在、マリメッコには新旧合わせて30人近くの契約デザイナーがいる。そのうち、才能あるパターンデザイナー3人、パーヴォ・ハロネン、マイヤ・ロウエカリ、アイノ=マイヤ・メッツォラの仕事を紹介したのが本展だ。いずれも30〜40代の若手ばかり。ファブリックはもとより、展示の見どころは原画であった。フェルトペンで描いたような素描から、水彩画や切り絵など、それはもう種々様々。切り絵は日本の伊勢型紙のようでもあり、それを原画にしたファブリックは独特の雰囲気を持っていた。つまりマリメッコに人々が魅了される理由はここにあるのではないかと思う。デザイナーが自由にアイディアを練り、丁寧に一筆一筆を手描きしたものだからこそ、原画に力があるのだ。手作り(クラフト)の魅力である。


左:Aino-Maija Metsola 《Juhannustaika(真夏の魔法)》 (2007)
右:Paavo Halonen《Torstai(木曜日)》 (2016)

一方で、本社内にあるプリント工場の様子が映像で紹介されていた。そこに映るのは巨大なロール式スクリーン印刷機である。毎年、100万メートルの生地をプリントしているのだという。これを見ると、マリメッコはあくまでも工業製品(プロダクト)で成功を収めてきたブランドであることを思い知る。当然、そうでなければ世界進出はできていない。クラフトとプロダクト、一般的には相反するこの両面を併せ持ったブランドだからこそ、今のマリメッコの人気があるのだろう。本展ではさらに「JAPAN」をテーマにした作品も展示されており、その解釈は三者三様で興味深かった。

2017/11/17(金)(杉江あこ)

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