ゲッコーパレード『リンドバークたちの飛行』:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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ゲッコーパレード『リンドバークたちの飛行』

2017年12月15日号

会期:2017/10/12~2017/10/17

島薗家住宅[東京都]

千駄木に島薗邸という国登録有形文化財の一軒家がある。生化学者の島薗順雄(1906-1992)の自邸として1932年に建設された、洋館に和館をついだ和洋並置式の住宅だ。戦時中は軍による接収を避けるため、診療所として使われていたこともあるらしい。軍用機や軍用艦をモチーフにあしらったステンドグラスが当時の記憶を微かに湛えている。

埼玉県蕨市を拠点とするゲッコーパレードは2016年、本拠地である旧加藤家住宅で「戯曲の棲む家」シリーズとして5本の戯曲を上演し、『リンドバークたちの飛行』はその1本として初演された。ブレヒト作のこの戯曲はタイトルの通り、チャールズ・リンドバーグの大西洋横断飛行を題材とし、もともとはラジオ劇として書かれた作品だ。風や寒さ、眠気と戦いながら孤独に飛び続けるリンドバーグの姿を、ゲッコーパレードは6人の演出家(黒田瑞仁、柴田彩芳、本間志穂、渡辺瑞帆、市松、古賀彰吾)の演出で上演した。演出家と一口に言っても演劇、現代美術、音楽、建築、身体表現、大道芸と専門はさまざまで、それぞれが場面ごとに凝らした趣向が楽しい。

観客はリンドバーグに寄り添い部屋を渡っていく。部屋ごとに現れては消えるリンドバーグの姿は、住居としての役割を終え、静かに微睡む島薗邸が夢見る記憶のようにも思われた。もちろん、島薗邸とリンドバーグとは直接には何の関係もない。だが、飛行機の性能向上は第二次世界大戦に大きな影響を与えた。リンドバーグの夢は戦争を経由して現在に接続されている。過去への視線は同時にかつての未来を覗きこむ。戯曲と建築はどちらも歴史の器だ。上演は二つの異なる記憶を現在に響かせる。

今回の再演は文化財となっている建築で同作を上演していく「家を渉る劇」シリーズの第1弾。すでに第2弾として2018年2月には鎌倉の旧里見弴邸での上演も予告されている。岸田國士『チロルの秋』をテキストに使った本拠地公演も12月18日(月)まで上演中だ。


ゲッコーパレード『リンドバークたちの飛行』
撮影:野村渉

ゲッコーパレード「リンドバークたちの飛行」初演時スポイラー映像:https://youtu.be/v3XIc4Fjeqo
公式サイト:http://geckoparade.com/

2017/10/14(土)(山﨑健太)

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