2018年06月15日号
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artscapeレビュー

ワードプレイ ワセニ・ウォルケ・コスロフ

2017年12月15日号

会期:2017/11/23~2017/01/31

中村キース・ヘリング美術館[山梨県]

快晴。いつもとは逆の左手に富士山をながめながら小淵沢へ。今日は第9回中村キース・ヘリング美術館国際児童絵画コンクールの授賞式。世界中から公募した4~17歳の子どもの絵(今回は計1240件集まった)を、年齢別に3部門に分けて審査。ぼくも選ばせてもらったので、授賞式に出席して賞状を渡さなければならない。受賞者の約半数は香港、シンガポール、バングラデシュ、アメリカ、カナダ、ブルガリアといった外国の子。ぼくが選んだのは東京の村田奏満くん(たまたま苗字が同じ)、イギリスのクローディア・ピピスさん、マレーシアのムハンマド・ハジム・ビン・アーマド・ナザリくんの3人で、クローディアさんとムハンマドくんは欠席。そりゃ子どもの絵の表彰式のために海を越えて山梨まで来ないよね。と思ったら、わざわざ駆けつけた家族も何組かいた(交通費は自腹)。この授賞式のあと、子供たちも参加してワセニさんがワークショップを行ない、夜には「ワセニ展」のレセプションパーティーが開かれた。授賞式に合わせてパーティーを企画したのか、パーティーに合わせて授賞式を設定したのかよくわからないけど、晩秋の八ヶ岳山麓が人でにぎわった。
で、ようやく「ワセニ展」の話だが、ワセニ・ウォルケ・コスロフはエチオピア出身でアメリカ西海岸に住むアーティスト。その作品は「ワードプレイ」というタイトルにも示されているように、言葉、文字をモチーフに展開した絵画。最初にエチオピアのアムハラ語をベースにした一覧表仕立ての絵があり、展示が進むに連れ徐々に色が増え、文字に絵が絡みつき、ゴーキーを思わせる初期の抽象表現主義風の絵画に変化していくプロセスがたどれる。と思ったら、別に制作年順に並べているわけではなく、文字と絵画のあいだを行きつ戻りつしているらしい。変わらないのは画面をグリッド状に分割していることと、文字を発展させた記号のような黒い線描が骨格になっていること。もしキース・ヘリングとの共通性があるとしたら、この黒い記号的な線描表現だろう。絵画としては特に新鮮みがあるわけでもないし、現代アフリカのプリミティヴアートに括られてしまう可能性もあるが、むしろジャズやエチオピア音楽などポップカルチャーとの関係から見直したほうが、新たな発見があるかもしれない。

2017/11/26(日)(村田真)

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