artscapeレビュー

鈴木サトシ「わかれ道」

2017年12月15日号

会期:2017/11/22~2017/11/28

銀座ニコンサロン[東京都]

鈴木サトシは1936年、広島県尾道市生まれ、岡山県瀬戸内市牛窓町在住の写真家である。石津良介に師事して、1970年代から作家活動を開始し、ニコンサロンやほかのギャラリーでたびたび個展を開催している。90年代に発表した「近視眼」シリーズは、日常の事物をひと捻りして「現実にないオブジェ」に変貌させて撮影したユニークな作品だった(日本カメラ社から写真集『近視眼』、『近視眼サクヒンX』として刊行)。
6回目になるという今回の銀座ニコンサロンでの個展でも、独特の視点で切り取られた写真が並んでいた。ここ数年、両親、親友、愛猫などの死去が相次いだのだが、そんななかで「わかれ道」の光景が気になりだしたのだという。たしかに、道が二つに分かれている場所に立つと、どこか宙吊りになったような不思議な気分を感じることがある。鈴木の写真に写っている「わかれ道」は、左右だけでなく上下に分かれていたり、さらに3本、4本と枝分かれしていたりして、それぞれに固有の表情があり、じつに味わい深い眺めになっていた。展示されていた36点のなかに、1枚だけモノクロームではなくカラー写真が混じっている。画面の中央に赤い鳥居があるので、あえてカラーでプリントしたのだという。そんな融通無碍のアプローチを含めて、一点一点見ていくと、じわじわと面白味が増してくる。80歳を超えても、柔軟な思考力、創造力に衰えはないようだ。なお、本展は12月21日~29日に大阪ニコンサロンに巡回する。

2017/11/22(水)(飯沢耕太郎)

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