2018年12月01日号
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artscapeレビュー

青年団リンク キュイ『前世でも来世でも君は僕のことが嫌』

2018年02月01日号

会期:2017/12/14~2017/12/24

アトリエ春風舎[東京都]

歴史は繰り返す。それが真実だとして、なぜ歴史は繰り返してしまうのか。

青年団リンク キュイは劇作家、演出家の綾門優季が主宰するユニット。公演ごとに綾門が劇作、あるいは演出のどちらかを担当し、もう一方には公演によって異なる作家を迎えるスタイルがユニークだ。2016年にはチェルフィッチュ/岡田利規『現在地』を綾門演出で上演している。今作では綾門の戯曲を劇団・お布団の得地弘基が演出した。

夜の公園、高速バス、大学構内、喫茶店。四つの場面で繰り返される理不尽な暴力と無差別殺人。いずれにせよ登場人物たちは皆殺しにされ、そして何事もなかったかのように次のターンが始まる。舞台上に投影される1-1、4-2という数字が示すように、ある種のゲームのように場面はループし、彼らはその都度殺される。繰り返しに気づいた男はそこから抜け出そうと試みるが——。


[撮影:大橋絵莉花]

登場人物たちが繰り返しから抜け出すことは原理的に不可能だ。彼らの運命はあらかじめ戯曲に書き込まれている。行為とともに読み上げられるト書きが、それがあらかじめ定められたものでしかないことを強調する。観客は舞台上の理不尽を客席から安全に眺める。あるいは、客席に縛り付けられ、見るに耐えない暴力を見続けることを強制される。

なるほど、演劇やゲームでは理不尽な暴力が繰り返される。理由はいらない。では現実は? やはり暴力は偏在し、延々と繰り返されている。登場人物の一人は金属バットを振るいながらこう言う。「ほら、ちゃんと見てなかったでしょ。ちゃんと見てないから、こうなるのに」。あるいはこう。「自分がふるっている暴力も、まるで他人のものみたいだね。他人の受けた暴力は」。殺され続ける彼らの命は軽く扱われているのだろうか。そうかもしれない。だが私たち観客は軽々と殺され続ける彼らをそれでも見続けなければならない。見るに耐えない現実から目をそらさない、そらさせないこと。そうして倫理はかろうじて始まる。


[撮影:大橋絵莉花]

公式サイト:https://cuicuicuicuicui.jimdo.com/

2017/12/24(山﨑健太)

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