2018年02月15日号
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artscapeレビュー

東京芸術劇場『池袋ウエストゲートパーク SONG&DANCE』

2018年02月01日号

会期:2017/12/23~2018/01/14

東京芸術劇場シアターウエスト[東京都]

脚本・作詞に柴幸男(ままごと)、演出に杉原邦生(KUNIO)、振付に北尾亘(Baobab)と小劇場の気鋭と若手俳優を起用した本作は、20年前の石田衣良の小説を、現在の日本を映し出す舞台へと見事に生まれ変わらせた。

タカシ(染谷俊之)率いるG-Boysと京一(矢部昌暉)率いるレッドエンジェルスの対立が激化する池袋。トラブルシューターのマコト(大野拓朗)は抗争を止めるべく奔走する。柴の脚本は原作から恋愛要素を削ぎ落とし、本筋であるG-Boysとレッドエンジェルスの対立に集中した。原作の印象はそのままに、僅かな変更で作品の今日性を際立たせる手つきが見事だ。原作同様、作品の終盤ではG-Boysとレッドエンジェルスとの対立が仕組まれたものだったことが明らかになる。汚い大人たちに利用され、マスコミに踊らされる子供たち。本来ならば彼らが憎しみ合う理由はなかったはずだ。杉原の演出もまた、柴の力点変更を巧みに可視化する。主要登場人物を演じる俳優以外は、G-Boysとレッドエンジェルスの両方を演じるのだ。青か赤かというチームカラーの選択はささいな偶然に過ぎない。もしかしたら彼らは逆の色をまとい、向こう側にいたかもしれない。そこに本質的な違いはない。「やつらが」「やつらが」と彼らは相手を糾弾するが、「やつら」に果たして実体はあるのか。しかしひとたび血が流されてしまえば対立は激化し、憎しみは増していく。止めるためには誰かが痛みを引き受けるしかない。

チームカラーで統一した衣装はアンサンブルキャストを集団として提示し、立場の交換可能性を暗示する。だが、彼らは体型にせよダンス的バックグラウンドにせよ、一人ひとりが極めて個性的で、それぞれがそれぞれに集団に埋没しない魅力を放っていた。集団に飲み込まれず、個人としてあり続けること。集団としてではなく、独立した個人として対峙すること。彼らが体現していたのは、そんな倫理だったのかもしれない。


[撮影:渡部孝弘]

公式サイト:http://www.geigeki.jp/performance/theater163/

2018/01/05(山﨑健太)

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