2018年06月15日号
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artscapeレビュー

神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展

2018年02月01日号

会期:2018/01/06~2018/03/11

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

昨年からアルチンボルド、ブリューゲル、そしてブリューゲル一族と、古典的な美の規範からちょっと外れた画家たちの展覧会が続く。そんなマニエリスム芸術をはじめ、錬金術や天文学など妖しげな学問芸術をこよなく愛した神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の脳内宇宙に迫り、プラハ城内に築いたヴンダーカマー(驚異の部屋)を可能な限り再現してみようという好企画。出品作家はアルチンボルドとブリューゲル(ただし子孫のヤン親子)が有名なくらいで、あとはルーカス・ファン・ファルケンボルフ、ルーラント・サーフェリー、バルトロメウス・スプランガーといったあまり知られていない風変わりな画家たちが多い。いずれも現実にはない情景を細密に描いた幻想絵画で、その妖しさ、いかがわしさがまたルドルフ2世の趣味をよく反映している。

例えばファルケンボルフはバベルの塔や外遊するルドルフ一行を描いた小品、サーフェリーは森のなかに多種の動物を織り交ぜた博物画とでも呼ぶべきシリーズで、これらはアルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》や、ヤン・ブリューゲル(父)の《陶製の花瓶に生けられた小さな花束》などと同様、この広大で多様な世界(マクロコスモス)を1枚の絵(ミクロコスモス)に閉じ込めようとしたものだといえる。そしてこうした思想が、ルドルフ2世の脳内宇宙ともいうべきヴンダーカマーを支えていたに違いない。出品はこのほか、天文学関連の書籍、望遠鏡、時計、天球儀、大きな貝殻や貴石でつくった杯などにおよんでいるが、いかんせん学芸にウツツを抜かして国政を疎んじたツケが回ったのか、皇帝の死後コレクションは侵略などにより四散してしまった。そのため今回は、日本も含めた各地から寄せ集めなければならなかったという。質的にも量的にも物足りなさを感じる人がいるかもしれないが(実際ルドルフ2世のヴンダーカマーは質量ともにこれをはるかに凌駕していたはず)、むしろよくここまで集めたもんだとホメてあげたい。

2018/01/06(土)(村田真)

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