2018年12月01日号
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artscapeレビュー

ジェニファー・ヒッギー「現代アートについて書く方法──その最前線と実践のためのヒント:『frieze』誌エディトリアル・ディレクターによるレッスン」

2018年02月01日号

会期:2017/12/07

東京藝術大学[東京都]

美術ジャーナリズムの世界に足を突っ込んでもう40年になる私ですが、恥ずかしながらいまだにどうやって書いたらいいのかわからず、いつも四苦八苦している。そんなときに『美術手帖』元編集者の川出絵里さんから、東京藝大で『frieze』誌エディトリアル・ディレクターのジェニファー・ヒッギー氏による「現代アートについて書く方法」と題する公開レクチャーがあると聞き、なにかヒントを見つけられるかもしれないとワラにもすがる気持ちで参加した。もちろん川出さんの東京藝大助教デビューを盛り上げたいとの思いもあったが、そんな必要もないほど大教室は満杯で、こんなに「現代アートについて」書く人、書きたい人がたくさんいたのかとライバルの多さに不安になったものだ。

『frieze』は1991年にロンドンで創刊された「コンテンポラリー・アート&カルチャー・マガジン」で、ぼくは書店や図書館で立ち読みならぬ立ち見(図版だけね)しかしたことないが、90年代のYBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスツ)をはじめアートの最新動向を斬新なエディトリアルで紹介し、急伸してきたメディアで、近年はアートフェアやアカデミーの運営にも手を染めているのは知られたところ。気になるのは、公明正大であるべきジャーナリズムに携わりながらアートマーケットを動かしていることだが、日本でも評論家がギャラリーを運営したり、ジャーナリストが作品をつくったりしている例もあるし、ま、ギョーカイの活性化という意味では許されるか。

講義はまず川出さんがここに至るまでの経緯を語り、スカイプを通してヒッギーさんがさまざまな批評家の言葉を引用しながら持論を展開していくかたちで進められた。ぼくなりに噛み砕いていうと、美術批評家になって得することは、おもしろいアーティストに出会えること、それによって世界が広がること。悪いことはアーティストからうらまれること、いちど始めたら死ぬまでやめられないこと、その割りに金持ちになれないので別の仕事もしなければならないことなど。批評家の守るべきルールは、好きでもないアーティストについて書かないこと(書いたものは後々まで残る)、美術作品と同じくらい読者の心を動かすこと(なんらかのレスポンスを喚起させること)、英語で1000語(日本語だと4000字くらい?)以上書かないこと(だれも読まないから)、かしこそうにふるまうな、ジャーゴン(定型表現、専門用語)は避けろ、簡潔に、明快に……。はっきりいってぼくでも知ってること、やってることばかりではないか。なのになぜぼくは大成しないのかというと、ここが日本だから需要が少ないし、アートに対するリスペクトもないからではないか。と社会のせいにしたくもなるが、でもやっぱり向こうでも美術ジャーナリズムだけで食っていくのは至難の業という。結局どうすりゃいいんだ!?

2017/12/07(木)(村田真)

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