2018年06月15日号
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artscapeレビュー

『冬の夜ひとりの従業員が』

2018年03月01日号

会期:2018/02/12~2018/02/15

若葉町ウォーフ[神奈川県]

私はこの作品を東南アジアの友人と見た。彼らとは英語で話すのだが、英語が上手くない私はしばしば疎外感を感じることになる。だが、一方で私が彼らに強い親しみを覚えているのも、彼らとお互いに母国語ではない英語で話しているからだと思うのだ。

『冬の夜ひとりの従業員が』は台湾のアーティスト3組による三つの作品からなる。会場1階で上演された再拒劇団『定例監査の協奏』はキーボード、コーヒーメーカー、バネ、釘などが設置された大きなテーブルを楽器として使ったサウンドパフォーマンス。スーツを着込んだビジネスマンめいたパフォーマーたちが机を囲み、無表情のままオフィスワークのように「演奏」する様は非人間的だ。その耐えがたさはときに暴力となって噴出するが、作り手のアイロニカルな視線はパフォーマンスをどこかユーモラスなものにもしている。

[Photo: Ash Lin]

2階のスタジオで上演されたのはサウンドデザイナー蔣韜(チアン・タオ)とオブジェクトシアターアーティスト曾彥婷(ツェ・ヤンティン、カッパ)による『ナイトウォーク:何故?』。影絵と音によって夜の街の風景が立ち上がり、気付けばそれは幻想的なものへとスライドしている。やがて光と音が消えると彼らは窓を開け外を眺める。ノスタルジーと孤独のアンビバレントは若葉町という現実に接続され、そこに滞在する異国のアーティストである彼ら自身に回帰する。

[Photo: Ash Lin]

3階は宿泊施設。黄鼎云(コウ・ディンユン)『緘黙』の観客はそこに並ぶ二段ベッドのひとつに一人ずつ、あるいは男性二人で入り、カーテン越しにフロアの音を聞く。就寝準備の音は男性同士の愛の囁き、性行為の音へと移り変わり、観客は密かに聞き耳を立て続ける。見知らぬ者同士の一夜の関係。

[Photo: Ash Lin]

三つのパフォーマンスの示す疎外感と親密さは、海外からやってきた住人が多く住む若葉町という街が抱えるものでもあるだろう。二つの感情は相反するものではなく、ときに共犯関係を結んで魔法をかける。疎外感を共有する親密さ。そのとき、孤独は少しだけ温かい。


公式サイト:https://www.tpam.or.jp/program/2018/?program=ifonawintersnightanemployee

2018/02/15(山﨑健太)

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