2018年12月01日号
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artscapeレビュー

ルドン─秘密の花園

2018年03月01日号

会期:2018/02/08~2018/05/20

三菱一号館美術館[東京都]

「秘密の花園」とはなにやら妖しげなサブタイトルだが、実際ルドンの妖しい世界を堪能できる展覧会だった。そもそもなぜ三菱一号館で「ルドン展」かというと、同館がルドンの巨大なパステル画《グラン・ブーケ》を所有しているからであり、これを入手するときから独自に「ルドン展」を構想していたという。その目玉が《グラン・ブーケ》を含むドムシー城の装飾画の再現なのだ。この装飾画はドムシー男爵の城館の食堂の4つの壁面を埋めるように制作された計16点の連作で、パターン化した植物モチーフをシックな色合いでまとめ、どこか日本の屏風や襖絵を思い出させる。

連作は1901年に完成したが、プライベートな城館に常設展示していたため長いあいだ日の目を見なかった。その後オルセー美術館が15点を所蔵し、作風も画材も異なる《グラン・ブーケ》のみ、2010年の開館年に三菱一号館が取得。しかしすぐに日本には運ばず、翌年パリで開かれた「ルドン展」に貸して世界初公開したという経緯がある。今回オルセーから15点を借りられたのは、こうした貸し借りの関係があるからだろう。ちなみにオルセー所蔵の15点は三菱一号館のもっとも広い部屋に並べられたが、《グラン・ブーケ》は壁にはめ込まれているため、別室での展示となった。しかしこの絵は壁に固定されている上スポットライトが当てられているため、まるでプロジェクターで投影した映像のように見える。イメージを見るにはそれでいいのかもしれないが、物質感が希薄で頼りなさげだ。

ところで、この連作と同じ部屋に《ドムシー男爵夫人の肖像》も出ているが、これがルドンらしからぬアカデミックな肖像画。どうしたルドン? 夫人の前で上がったか? それとも、画面の左半分が白っぽく輝いているように見えるけど、わけのわからないものを描いて夫人に叱られ、後で消したのか? などと想像力を喚起させる程度に冷血な表情をした夫人像なのだ。その他《キャリバンの眠り》《エジプトへの逃避》《若き日の仏陀》《神秘的な対話》《眼をとじて》《ステンドグラス》《蝶》など美しい作品が少なくない。所蔵先は三菱一号館とオルセー美術館のほか、MoMA、ボルドー美術館、岐阜県立美術館、京都国立近代美術館、ポーラ美術館など。日本もずいぶん持ってるなあ。

2018/02/07(村田真)

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