2018年12月01日号
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artscapeレビュー

塩竈フォトフェスティバル2018

2018年04月15日号

会期:2018/03/07~2018/03/18

塩竈市杉村惇美術館ほか[宮城県]

平間至を実行委員長として隔年で開催されている塩竈フォトフェスティバル。6回目になる今回は、東日本大震災から7年目にあたる3月11日を中心に、塩竈市内のスペースで、展覧会やポートフォリオレビューなどの催しが開催された。

今回のテーマである「自己と他者」に沿うように、塩竈市杉村惇美術館で開催されたのが、「牛腸茂雄 まなざしの交錯」展である。牛腸の「日々」、「SELF AND OTHERS」、「幼年の『 時間とき』」といったシリーズから代表作34点をピックアップした、それほど大きな規模ではない展覧会だが、1950年に建造されたという元公民館の建物を改装した瀟洒なスペースに、写真が柔らかに溶け込んでいて、魅力的な展示になっていた。それにしても、いつ見ても牛腸の写真には見る者の心に深く食いいってくるような不思議な力がある。淡々と写しているようで、被写体となる人物たちの、本人すら気づいていないような痛みや翳りを感じとる能力が抜群に高いということではないだろうか。3月11日に会場で行なわれた、本展の構成を担当した三浦和人(牛腸の桑沢デザイン研究所の同級生)と平間至とのトークも、牛腸の写真に写っている被写体の細やかな情報を伝え、彼の「まなざし」のあり方を問い直す、とても充実した内容だった。

ほかにも、亀井邸では菱田雄介、横山大介、喜多村みか+渡邊有紀による「あなた/わたし」展が、ビルドスペースでは前回のポートフォリオレビューでグランプリを受賞した北田瑞絵の「一枚皮だからな、我々は。」展が開催されるなど、「自己と他者」というテーマ設定をしっかりと踏まえたいい展示を見ることができた。けっして派手ではないが、地に足がついた写真フェスティバルが、東北の地に根付きつつあるのは素晴らしいことだと思う。

2018/03/11(日)(飯沢耕太郎)

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