2018年05月15日号
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artscapeレビュー

『パシフィック・リム:アップライジング』『レディ・プレイヤー1』

2018年05月15日号

[全国]

日本のサブカルチャーに対するリスペクトが込められた2つの映画が公開された。2035年を舞台とした『パシフィック・リム:アップライジング』と2045年の荒廃した世界を描く『レディ・プレイヤー1』である。前者はギレルモ・デル・トロによる作品の第二弾(監督は別)、後者は権力者がメディアを締め付け、フェイク・ニュースが跋扈する現在の社会状況に問いかけを発した『ペンタゴン・ペーパーズ』で話題になったばかりのスピルバーグが立て続けに発表した新作だ。いずれも日本の特撮・アニメの影響が大きな役割を果たしている。『パシフィック・リム』の操縦型のロボットは、そもそも日本のサブカルチャーのお家芸であり、システムがハッキングされる続編の展開などは「新世紀エヴァンゲリオン」のプロットが想起されるだろう。また『レディ・プレイヤー1』は、古今東西の漫画、アニメ、ゲームから引用した、さまざまなキャラを散りばめているが、レースで『AKIRA』のバイクが活躍したり、最後のハイライトでメカゴジラとガンダムが対決するシーンが印象深い。物語の仕立て自体は、ゲーム世界における仮想現実×古典的な闘争劇だが、高密度の情報量は、サブカルチャーの経験値の豊かさによって鑑賞体験が大きく変わるだろう。

近年のハリウッド映画は、中国の市場を意識し、日本人よりも中国人がはるかに大きな存在感をもつが、『パシフィック・リム』でも、人型巨大兵器イェーガーの無人化と量産体制では中国の企業が登場し、『レディ・プレイヤー1』でも映画版では中国人の少年が主要なメンバーのひとりだった。とはいえ、『パシフィック・リム』の終盤は、怪獣が日本に集結し、富士山に向かう。俳優の布陣からは日本人のプレゼンスが後退したが、聖地として描くことで、怪獣を生みだした日本へのリスペクトにも配慮していた。怪獣やロボットなど、オタク文化は戦後日本のサブカルチャーが築きあげたものであり、21世紀を迎え、グローバルなマーケットにおいて再活用されている。一方、日本政府が掲げる官製のクール・ジャパンは、クリエイターを置いてけぼりにして、目先のイベントだけに執心しているようだが、はたして十年後、数十年後の未来に何を残すことができるのか。

2018/04/23(月)(五十嵐太郎)

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