2018年05月15日号
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artscapeレビュー

吉野英理香「MARBLE」

2018年05月15日号

会期:2018/04/07~2018/05/19

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]

吉野英理香のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでの3回目の個展となる本展のタイトルは、「光の中できらめく結晶石」を意味するというマーブル(大理石)から採られている。「日々のなか」で見出された事物のかけらを、拾い集めていくやり方に変わりはない。だが、2014~17年に撮影された作品から、17点を選んだ今回の展示作品の多くは、金属やガラスの輝き、鮮やかに色づく花々、光の戯れなど、彼女自身が「自由と希望を見出すカギ」と表現するような、美しく、肯定的なイメージに傾いているように思えた。

その「レンズを通して見た光の結晶」を切り出す手つきは洗練されていて破綻がない。前作の「NEROLI」(2016)では、どちらかといえば「匂い」への反応が強調されていたが、今回はより視覚的なアプローチになっている。写真作家としての安定した水準を保つことができる段階に達しているので、安心して写真を見ることができる。だが逆に、このまま洗練の度を強めていっていいのだろうかという疑いも生じてきた。吉野の写真がモノクロームからカラーに変わったのは、2011年の写真集『ラジオのように』(オシリス)からだが、その頃はまだネガティブで不透明な日常の厚みが、そのまま生々しく露呈していた。そこからノイズを削ぎ落としたことで、作品世界がやや小さくまとまってきている。ここで立ち止まることなく、五感のすべてを開放することで、安らぎと危険とが両方とも含まれているような、流動的な世界の像を定着していってほしいものだ。

2018/04/07(土)(飯沢耕太郎)

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