2018年10月15日号
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artscapeレビュー

開館45周年記念展 絵画と想像力 ベルナール・ビュフェと丸木位里・俊

2018年06月01日号

会期:2018/03/17~2018/06/12

クレマチスの丘 ベルナール・ビュフェ美術館[静岡県]

ビュフェ美術館が開館45周年だという。ベルナール・ビュフェといえば戦後まもない時期に10代でデビューし、早熟の天才画家と騒がれたものだ。戦後の荒廃した時代気分を映し出すかのような鋭い線描は、贅肉をそぎ落としたジャコメッティの彫刻とともに実存主義にも結びつけられ、人気を博した。だが、こうした厳しい時代背景の下に生み出された芸術というのは、衝撃力はあるけど往々にして長続きしない。社会的にも個人的にも平穏な時代が訪れると次第にマンネリに陥り、また抽象芸術の全盛期には時代遅れと見なされていく。

まあ日本では地理的にも文化的にも時差があるので、この美術館が建った70年代前半にはまだビュフェの威光は輝いていた。今回初めてビュフェの作品をまとめて見て、いったいこの画家はモダンアートの文脈のなかでどのように位置づけられるのか、首をひねった。とくに60年代以降どんどんマンガチックになっていき、芸者を描いた《日本女性》や関取を描いた《相撲:睨み合い》などはご愛嬌としても、1988年の超大作「ドン・キホーテ」シリーズなど笑いをとろうとしたとしか思えないほど。

だが、最後に大展示室に掛かっていた作品を見て、少し見方が変わった。そこには丸木伊里・俊の《原爆の図第三部 水》と、ビュフェの「キリストの受難」シリーズ2点が比較できるように展示されていた。どちらも「受難」をテーマに同時期に描かれたほぼモノクロームの大作で、「原爆の図」は180×720センチ、「キリストの受難」は1点が280×500センチある。こうして比べてみると、「原爆の図」が水墨画ベースのため線が薄くて細く、意外にも黒い輪郭線でかたちづくったビュッフェの人物が力強く感じられたのだ。もちろんテーマも違うし、ビュフェはまだ若く勢いがあったころの作品だから、比較してもあまり意味はないかもしれないが、それにしてもビュフェの人物像に力強さを感じるとは、予想外の発見だった。

2018/04/22(村田真)

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