2018年12月01日号
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artscapeレビュー

Yukawa-Nakayasu「深呼吸の再構築」

2018年06月15日号

会期:2018/05/25~2018/06/10

Gallery PARC[京都府]

蚤の市で購入した日用品、ファウンド・オブジェ、石や植物の種、貝殻や羽根といった自然の素材などをブリコラージュ的に組み合わせ、民間信仰の祭礼や呪具を思わせる繊細なオブジェをつくり出すYukawa-Nakayasu。「豊かさとは何か」を問う独自の概念「豊饒史の構築」を掲げ、民間信仰や各地の風習、個人史のリサーチに基づきながら、近代的な美術の制度から捨象されてきた想念の形を審美的なオブジェとして提示してきた。

本展でも基本的姿勢は同じだが、展示形態が有機的な宇宙から整然とした秩序へと大きく変質した。オブジェ群が「ナマ」の状態で、あるいは祭礼の場を擬似的に構築するように散りばめられていた展示形態から、絵画の額縁、ガラスケース、展示パネルといった民俗博物館/美術の制度的フレームへと移行し、オブジェに境界画定や文脈づけを与える基底面のレイヤーが追加されている。

本展での展示のストーリーは、以下のように描けるだろう。まず第1室では、「火、光、熱」をキーワードに連想的に繋がるファウンド・オブジェとイメージ(写真、映像)が接合される。例えば、「野焼き」の写真が、炎の焦げ痕のついた木材のフレームに入れられ、写真の中央から伸びたパイプには焦げた布が巻き付けられて松明を思わせるが、先端で輝くのは炎ではなく人工的な電球である。溶岩や太陽の写真が「自然界の火や光」を示す一方、焦げ跡のついた布には金継ぎのような装飾が施され、破壊が新たな価値を生み出すことを示唆する。ここに、重ねられた2つの意味を読み込むことができるだろう。1)動物/人間を弁別し、文化の発生としての「火」。例えば、木材の表面を「焼く」行為が強度の増加や焦げ目の模様づけになったり、(焦げ跡に施した)金継ぎが修復と装飾という二重の役割を果たすように、昔からの技法の転用が、(架空の)民俗資料のように並べられる。2)視覚の前提条件としての「光」。「見ること」、視覚の制度化としてのフレーム(額縁、ガラスケース、パネル)への言及につながる。



[撮影:麥生田兵吾 Mugyuda Hyogo 画像提供:ギャラリー・パルク Gallery PARC]

そして、1)と2)が重なり合ったものとして、もう1室の展示を考えることができるだろう。ここでは、サブロクという規格化されたサイズの4枚のベニヤ板の上に、拾遺物に手を加えたさまざまなオブジェや写真が貼り付けられ、それぞれのパネルが「恋愛成就の迷信」、「火」、「水」、「貨幣と地図」というグループ群を形成していることが分かる。「キャプションのない民俗博物館」の様相だ。

民間信仰(の擬態)により、目に見えない精神的価値や想念を美的に再構築してきた「豊饒史」は、文化史的フレーム/美術の制度的フレームを自己言及的に内在させ、より拡がりをもって展開しつつある。


[撮影:麥生田兵吾 Mugyuda Hyogo 画像提供:ギャラリー・パルク Gallery PARC]

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