2018年10月15日号
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artscapeレビュー

五木田智央「PEEKABOO」

2018年06月15日号

会期:2018/04/14~2018/06/24

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

東京オペラシティアートギャラリーで開催された五木田智央の「PEEKABOO」展の出品作を、写真作品として論じることは可能だと思う。むろん作品の「素材」は「アクリルグワッシュ、キャンバス」なのだが、彼の作品が「60~70年代のアメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドの雑誌や写真」を元に描かれているのは明らかだからだ。しかも単に写真を下絵としているだけでなく、写真的な明暗のグラデーション、細部の描写をそっくりそのまま引用している。複数の写真をコラージュしているように見えるものもあるが、そのカット・アンド・ペーストの具合が、画面から明確に読みとれるものも少なくない。

さらにその「写真らしさ」が際立つのは、五木田の作品がすべてモノクロームで仕上げられているからだろう。いうまでもなく、現代社会に流通している画像の大部分はカラーである。モノクロームの画像は否応なしにノスタルジアを喚起するとともに、観客に「写真らしさ」をより強く印象づける。かなり大きなサイズで描かれているものが多いにもかかわらず、五木田の作品が、スペクタクル性よりもむしろ親密な雰囲気を感じさせるのは、それらが「写真らしさ」から大きく逸脱しないように、巧みにコントロールされているからではないだろうか。

今回の五木田の展示の白眉といえるのは、「800点以上のドローイングの小品からなるインスタレーション」(「Untitled」2008~2015)だった。それを見ていると、多彩な技法、様式で描かれた「小品」の、一個一個の材料になった「雑誌や写真」そのものが見たくなってくる。「アクリルグワッシュ」で仕上げられる前の「スクラップブック」の状態でもぜひ公開してほしいものだ。

2018/05/10(木)(飯沢耕太郎)

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