2018年12月01日号
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artscapeレビュー

没後50年 河井寬次郎展 ─過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今─

2018年08月01日号

会期:2018/07/07~2018/09/16

パナソニック汐留ミュージアム[東京都]

力強い、そんな印象だった。これまでに河井寬次郎の作品は日本民藝館でしか観たことがなかった。同館のコレクションは柳宗悦の目によって選ばれたものということもあり、どこか品の良さを湛えた作品が多い。ところが、本展で作陶初期から後期までの作品、さらに木彫やキセル、家具、言葉などを併せて観ると、河井へのイメージがずいぶん変わった。おそらく器用ゆえにいろいろな作風ができてしまうのだろうが、そこに通底するのは、河井の人間力とも言えるどっしりとした力強さのような気がした。

まず、河井が、初期に中国や朝鮮の古陶磁に倣った作品を焼いていたことには驚いた。しかしその後、柳や濱田庄司とともに民藝運動を推進するようになり、自身の作品にも「用の美」を追い求めるようになる。戦争を挟んで作陶をいったん中断し、戦後には自身の内面から湧き出る創作意欲を次々と形に表わしていく。河井の作品が輝きだすのは、このころからだ。素朴だけど重厚な形状に、色鮮やかな釉薬を巧みに使った独特の模様。この色鮮やかな釉薬使いは、東京高等工業学校窯業科を卒業後、京都市立陶磁器試験場で技手として研鑚を積んだたまものであろう。焼物はある意味、化学だ。同試験場で身につけた化学的知識が、河井の表現の幅を広げたに違いない。

なかでも特に目を引いたのは、木彫である。そもそもは自邸を建築した際に余った木材を使って彫り始めたもので、仏師にイメージを伝えて下彫りをしてもらい、河井が仕上げ彫りをしていたという。木彫りは焼物のように色鮮やかな釉薬を使わない分、彫りによる造形がじかに伝わってくる。しかも焼物よりも複雑な造形が可能だ。それゆえ何とも言えない力がみなぎっており、圧倒された。また、作陶を中断せざるをえなかった戦中にこつこつと書き溜めたという、短い詩句も心に響いた。「暮らしが仕事 仕事が暮らし」「新しい自分が見たいのだ──仕事する」「此世は自分をさがしに来たところ 此世は自分を見に来たところ」など独特の言い回しから、河井の人間性が伝わってくる。こうした焼物以外の作品に触れることで、河井の焼物も初めて理解できたような気がした。

《木彫像》(1954ごろ)河井寬次郎記念館[撮影:白石和弘]

展示風景 パナソニック汐留ミュージアム

公式ページ:https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180707/index.html

2018/07/14(杉江あこ)

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