2018年10月15日号
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artscapeレビュー

モネ それからの100年

2018年08月01日号

会期:2018/07/14~2018/09/24

横浜美術館[神奈川県]

一昨年の「クラーナハ展」がそうだったように、最近クラシックな画家の展覧会に現代美術が介入してくる例が増えているが、この「モネ展」もそう。タイトルにあるように、これは「モネ展」であると同時に、モネに感化されたりモネと関連づけられる画家たちの約100年の流れを紹介する展覧会でもあるのだ。出品は、モネが初期から晩年まで29点。あとはデ・クーニング、マーク・ロスコ、サム・フランシス、モーリス・ルイス、リキテンスタイン、ウォーホル、ゲルハルト・リヒター、堂本尚郎、松本陽子、福田美蘭、丸山直文、鈴木理策ら内外26作家による67点。モネもその他も作品の大半が国内から出品されるので、「モネ展」としては比較的安上がりに済んだに違いない。それにしても国内にこれだけのモネ作品があるとは、ちょっとした驚き。

モネだけ見ていくと、基本的に時代順に並んでいて、最後のほうは睡蓮のシリーズのみ。モネの影響を受けた画家たちの大半は睡蓮以降の錯綜とした色彩と奔放なタッチに着目している。その最初の例がデ・クーニングをはじめとする抽象表現主義だ。一般に20世紀のモダンアートの流れは印象派に始まり、ポスト印象派が受け継ぎ、フォーヴィスムキュビスムが発展させ、構成主義ダダシュルレアリスムと広がり、第2次大戦を境にアメリカに移って抽象表現主義に結実するといわれているが、ここではモネの晩年の筆づかいがいきなりニューヨークの抽象表現主義に接続されているのだ。といっても、必ずしも彼らがみんなモネを参照したというわけではなく、抽象表現主義の激しい筆づかいにはモネという先駆者がいたということだ。この「再発見」によって、晩年の作品の評価が低かったモネの「再評価」が進んだのだ。

こうしたモネの筆づかいに感化されたサム・フランシス、ルイ・カーヌ、堂本尚郎、松本陽子といった画家たちのほか、モネのモチーフやスタイルを参照したリキテンスタインや福田美蘭らポップ系の画家たちも選ばれている。とりわけ福田の新作2点は、高層ビルの上階に位置するレストランの窓から見える都会の夜景と早朝の風景を、店内のテーブルとともに描いたもの。点々と白く浮かぶテーブルが睡蓮の葉、その上のロウソクの明かりが花に見えるというだけでなく、ガラス窓の反映、室内と屋外のダブルイメージ、そして夜と朝の時間差など、「睡蓮」シリーズの特質を巧みに採り込み、さらにタッチまで模倣している。いつもながら見事。

2018/07/13(村田真)

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